昨年末発売と同時にX(旧Twitter)で話題になっていたので、
サンプルを読んでみたら捕まって、思わず勢いでポチってしまったこの本は、
翻訳家の金原瑞人さんが、英米文学に登場する
“わかるようでわからない”おなじみのアイテムや表現をひも解くエッセイ集だ。
例えば「アブサン」「アルコーヴ」「エシャロット」、
「オリーブ色の肌、ブロンズ色の肌」や「ハート型の顔」、
「ヒマシ油」や「マントルピース」なんていう項もある。
「ターキッシュデライト」とくれば、
とりあげられるのはあの本だ!とわかる人にはわかるだろうが、
村岡花子訳の『アンの娘リラ』で「軽焼き饅頭」と訳されたお菓子が
「シュークリーム」だと聞いて思わず笑ってしまう人も多いだろう。
私のように北原白秋のうたう「ペチカ」が
ロシア由来ではないと知って驚く人もまた。
同じくアンネタでいうと
Anne of Green Gablesを『赤毛のアン』と訳したのは村上花子のお手柄だと思う。
と著者は評す。
原題をそのまま『緑の破風屋根のアン』と訳してもあまり面白そうではないから。
ただこの「緑」にも意味があって……と、続く話に、ずっと苦手意識があって、
避けて通ってきた『赤毛のアン』にもかなり興味がわいてきた。
それにしても、
「エシャロット」の項に触発されて、
思わず夏目漱石
『薤露行』を読んでしまったのは嬉しい(?)誤算ですむが、
「自分の訳した作品の中から○○が出てくる箇所を探してみると……」とか、
「たとえば誰それの作品のこんなところに…」と、
紹介される引用がまた面白そうなものばかりで、
読みたい本リストがどんどん伸びていくことに
(そんなつもりではなかったのに…)と思わず焦る。
この作品にはあの言葉がいくつ登場するんだろうかとか
この言葉は今のイギリスではどう使われているかとか
これ、フランス語だとどうなるんだろうとか
金原さんがふと思う疑問について、
あれこれ調べてくれたり、応えてくれたりする人たちがいて
後進の指導を続けてきた著者の人脈と人柄にも感心させられもする。
途中、金原ひとみさんの『蛇にピアス』の中国語版のタイトルが
『裂舌』となっているわけなんてエピソードも盛り込まれていて、
へえ!と思うと同時になんだか妙にほっこりしたりもした。
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