七人の鬼ごっこ (中公文庫)【Kindle】



本書は三津田信三作品としてはかなりミステリ寄りでホラー要素が薄く、そのためか、さまざまな要素を盛り込みながらそれを十分に生かせず、小さくまとまったものになってしまった。
本書『七人の鬼ごっこ』は、「西東京生命(いのち)の電話」にかかってきた、自殺するかどうか“電話ゲーム…

本が好き! 1級
書評数:594 件
得票数:10324 票
「ブクレコ」からの漂流者。「ブクレコ」ではMasahiroTakazawaという名でレビューを書いていた。今後は新しい本を次々に読む、というより、過去に読んだ本の再読、精読にシフトしていきたいと思っている。
職業はキネシオロジー、クラニオ、鍼灸などを行う治療家で、そちらのHPは→https://sokyudo.sakura.ne.jp



本書は三津田信三作品としてはかなりミステリ寄りでホラー要素が薄く、そのためか、さまざまな要素を盛り込みながらそれを十分に生かせず、小さくまとまったものになってしまった。
本書『七人の鬼ごっこ』は、「西東京生命(いのち)の電話」にかかってきた、自殺するかどうか“電話ゲーム…




事件はかなり陰惨なはずだが、おどろおどろしくないサラッとした描写で、数多くの登場人物もしっかり書き分けられ、結構長い話だがサクサク読める。まさによくできた大衆小説という感じの作品。
大衆紙「クラリオン」の記者、ジェイコブ・フリントは、1930年のロンドンに颯爽と登場し、コーラスガー…




自死した中学生が残した、自分が受けた凄惨ないじめについて書かれた遺書。だが、1人のルポライターがそれに違和感を感じ、事件の取材を始める。彼が30年に及ぶ取材の果てに見たものとは?
ルポライター、小林篤によって書かれた本書『see you again』については、カバー袖にある紹介…




皮膚を見れば見るほど見えてくるのは、身体の外側に沿ってあるものこそ、人間を人間たらしめている本質だということだ。皮膚とはすなわち、私たち自身なのだ。(第10章より)
「皮膚は人体最大の臓器」ということが、最近とみに言われるようになった。本書のプロローグにも 皮膚は人…




ダール作品には、しばしば男女(特に夫婦)の間のすれ違いが、あるグロテスクな結末を引き起こす物語が描かれる。だが、今読み返してみると、その裏には女性に対する強い嫌悪と恐れがあることが分かる。
私は中学1年の頃、まだ創刊間もないハヤカワ・ミステリ文庫でロアルド・ダールの『あなたに似た人』を読ん…




長らく絶版だった本書は先頃、文庫で復刊されたが、その際、版元である早川書房が異例の「お詫び広告」を出したという、曰く付きの1冊。
飛鳥部勝則の『堕天使拷問刑』は2008年1月、早川書房からハヤカワ・ミステリワールドの1冊として刊行…




ボワロ&ナルスジャックが得意とした人の持つ猜疑心や不信感が引き起こす恐怖やサスペンスは、人が人である限り未来永劫変わることはない。本作もまた、今なお色褪せない、そんな作品の1つである。
かつてフランスミステリの騎手であったボワロ&ナルスジャックによる『犠牲者たち』を読むのは、今回で三度…




本書はタイトルに「マクロイ傑作選」という言葉が添えられているが、収められた作品たちは、まさにその名に恥じぬものである。
ヘレン・マクロイの短篇集である本書『歌うダイアモンド』には、タイトルに「マクロイ傑作選」という言葉が…




近頃珍しい本格謎解きミステリであると同時に、謎解きミステリのパスティーシュでもある本作に、くれぐれも「読者よ欺かるるなかれ」。
かつて大阪船場で小間物問屋から始まり、明治期に香水や化粧品の商いで成功し、大鞠百薬館の名で一時代を築…




「こどもはもっともしんこくなやまいだよ。おおくのひとはうまれながらにしてきししこどもだ。こどもであることはとてもつらいことだよ。」(「子供という病」より)
井上雅彦編集による書き下ろしホラー・アンソロジー集〈異形コレクション〉。およそ30年にわたって刊行が…



「哲学はこれまでしゃべりすぎてきた……」という鷲田清一が、〈聴く〉という、いわば受け身のいとなみを通して、〈聴く〉こととしての哲学=「臨床哲学」を提起した本。
阪神淡路大震災を受けて書かれた連載記事を元に刊行され、東日本大震災を契機に文庫化された、この鷲田清一…





陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転ず──この作品のキモを短く言い表すとしたら、こんな言葉がふさわしい。そうそう、そうだよ! こういう京極夏彦が読みたかった!
陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転ず──この作品『ヒトでなし 金剛界の章』のキモを短く言い表すとし…




「化け物なんか、どこにもいません。これはね、僕が思うには、この家の記憶だと思うんです。」(「美しい家」より)
現時点で通算58巻を数え、今なお刊行が続いている井上雅彦編集による書き下ろしホラー・アンソロジー集〈…



ある毒殺事件にまつわる真実が、いずれもかなり怪しげな4つの手稿を突き合わせることで浮かび上がる、というものだが、そこには17世紀中期のイングランドの政治、社会、文化、風俗といったものが絡み合っていた。
17世紀の中頃、イングランドのオックスフォードで起こった毒殺事件について、事件の関係者と何らかの親交…




本書は単なるホラー・サスペンスではなく、実はささやかな反戦小説兼アメリカによる自省の書でもあり、(「精霊(スピリット)」が出てくるから、というわけではないが)スピリチュアルな書でもある。
初めて人を殺したとき、殺したのはふたりだった。 この『幽囚の地』はこんな一文で幕を開ける。この冒頭…




櫻田智也による第2短篇集。前作より(普通の)ミステリ作品らしくなった分、物語が先読みしやすくなったと感じた。とはいえ、日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞のダブル受賞は伊達ではない。
この『蟬かえる』は、第10回ミステリーズ!新人賞に輝いた 『サーチライトと誘蛾灯』 に続く、櫻田智也…




ルメートルは本作で戦争という事態に翻弄される(兵士を含む)人々の哀しさ、したたかさ、逞しさといったものを書こうとしたのだと思う。そういう意味で、これはフランス版「この世界の片隅に」なのかもしれない。
ピエール・ルメートルは日本では 『悲しみのイレーヌ』 、 『その女アレックス』 などのエグいミステリ…




入門書や解説書とは違い、本人の思索が圧倒的な密度で凝縮された本書は、読む側にも相当な体力と精神力が要求される。その代わり、読み手が真剣に対峙するならば、それに応えてくれる本だと思う。
世の中には「ユングはこう語った」、「ユングによれば…」といった言説が溢れかえっているが、その中には真…




「知ってる? 魂なんてないんだよ。幽霊なんていないんだよ」(「屋上から魂を見下ろす」より)
井上雅彦の手で1997年以来、刊行が続けられている、テーマ別オリジナル新作アンソロジー集《異形コレク…




面白いのは『だから見るなといったのに』というタイトルだ。収録作を読んだ後、このタイトルを思い返すと、作品ごとにこのタイトルが違う意味を持って立ち上がってくるのが分かる。
9名の作家による9作が収められたライトなテイストのホラー・アンソロジー、『だから見るなといったのに』…