上下巻合わせての感想です。
若いのはもちろんヒロイン江波恵子やその周りの女学生たちなんだけど、今の私が読むと相手の28歳の教師・間崎慎太郎やもう一人のヒロイン橋本先生だって結構若い。もしかしたら江波恵子のお母さんだって「若い」かもしれません。
だけど、さすがに私もこの小説がもてはやされたころのことは知らず、映画やドラマが数多くリメイクされたことも知りませんでした。
それでもヒロイン役の吉永小百合、桜田淳子は映画 ドラマでは松坂慶子や石川秀美、と言われてもすでにわからない世代も多いかもしれませんね。
あまりにも面倒くさい「若い人」たち。あ、でも周囲の女学生やほかの先生方はいたって普通です。江波恵子に「恋愛相談」を受け親身になったら急に、今のは嘘で先生に優しくして頂きたかっただけーーなんて翻されたりして振り回される親切な女の古株先生なんかもう可愛そうになります。
そうそう一番面倒なのは恵子のお母さんかも。
とりあえず主人公間崎と橋本先生は議論が好き。長いセリフが多くて、それは欺瞞だ自己弁護だ自分に嘘をついている等々相手を論破したりされたり。私のような読者はすっかり置いてきぼりです。この時代の読者はみんな理解されてたのかな、と自分の理解力が心配になります。
個人的には台詞で心理描写や状況を感じさせる戯曲が好きなのですが、この作品では彼らの会話から教育観や社会制度への主義主張、その後ろに隠れた個々の性格や恋愛感情なんかを全部読み取るのはなかなか難しいです。
校内での紛失事故について持ち物検査をするべきか、すべきでないか、とかいうことについて職員室でも意見が割れ、結果行ったことで生徒に反発され、なんていうことは事件としてはわかりやすい。
修学旅行先で先に申し出がなかったのに生徒を引き取りにきた親戚と、引率の先生として間崎先生が引き渡さないと頑張ったところなんかは当時の学校あるあるなのかもしれないなと思いました。(修学旅行も期間が長く、途中親戚の家で過ごすこともあったようです)
参観授業で間崎が「殉死」について取り上げて生徒に意見を求めたり自身の考えを述べたりするところは興味深かったけれど、これは女学校の教師を数年勤めた作者がこういう授業をしたかったのかもと思います。(したのかもしれませんが)
この作品が面白く読めるかどうかは江波恵子のキャラクターが愛せるかどうかにかかっていると思いますが、私にはこんな子が学校にいたらちょっとお友達にはなれないし、素敵だとひそかにあこがれる感じとも違う。小説を書くなら面白い相手だと少し離れたところで観察したり想像したりは楽しめるかもしれないけれど、近づくと相当しんどそう。
間崎先生は彼女に興味を持ち 惹かれ、ずっとそばにいてあげたいと思うまでに至ったのだけれど そのまま彼女と幸せな一生の伴侶になれたのかは疑問です。
なにしろ彼女の気持ちはとらえどころがなく行動にも一貫性がない。自分がしっかりある子なのかと思えば結構もろく、育った家庭について不幸を嘆いてみたりもするけれどこの母子の依存関係は強くて、これにもずっと振り回されそう。
彼女と彼女の母親と一生付き合うにはまだまだ間崎先生も役不足だったように思います。
これだけインパクトの大きい江波恵子です。その面影はたとえ離れても一生ついてくると思いますし、さて橋本先生とでも幸せになれるのでしょうか、そこもまたいろいろ不安ですが。
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