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徳川幕府にまねて、地方の藩主が目安箱を設置する。

江戸染まぬ
 江戸時代の武士を中心にリアルな人間関係を描いた短編集。7編が収録されている。

 最も印象に残る作品は本のタイトルにもなっている「江戸染まぬ」だが、この短編は、中央公論賞、柴田錬三郎賞とダブル受賞作品「底惚れ」を生んだ作品になっているので、書評はそちらに譲る。

 それで、ここではその次に面白いと思った「いたずら書き」を取り上げる。

 主人公はある大名、藩主の近習としてつかえている。藩主の指示により、幕府が行っている評定所前箱制度を実施することになる。評定所前箱とは通称目安箱のことである。目安箱は毎月2日、11日、21日と3回開けられる。目安箱に入れられた書状は、わざわざ藩主が読むことはない。近習である主人公が箱を開けて、上申する価値がない書状は中庭で焼却する。殆どが個人的思い込みや恨みのようなものばかり、取るに足らないということで今まで、藩で取り上げたことはない。

 ある日、驚くことに藩主が自らの書状を持って、これを目安箱にいれておけと主人公に命令する。目安箱を開封する日、主人公は藩主の書いた書状を開封して読むが、藩の制度への改善の内容ではなく、部下に対する不満だったので、上申する必要は無いと判断し、藩主の書状も焼いてしまう。

 主人公の幼馴染が、幕府へのお役目の足掛かりとなる奏者番につき、とうとう幕府のそれも若年寄、徳川将軍の近習に取り上げられる。こうなれば、藩の問題や、藩主の不正を成敗できる立場になったことになる。
 
その途端、藩主の目安箱への投書はピタリと止む。

 そうだよな。まずは自分が一番かわいい。そんなところに目安箱をおいても無駄だよな。
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  • 掲載日:2026/05/01
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