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こういう読書も必要だ。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
おやつにキャベツ
 とーっても可愛い本なのであります。造りが素敵で、オシャレなのです。10編の小話が収録されていて、作者の手になるイラストと共に楽しくあっけなく読めてしまうのであります。たとえば、三本の足がある王様の話、いつも横を向いたままの王様の話、噂が空飛ぶいきおいで広まってしまう話や、不眠症のサルタンがいかにして、健康を取り戻したのか?という話に、二羽のガチョウの犯した犯罪の見事な解決の顛末などなど、ほんと軽いお話ばかりなのであります。

 本書のタイトルはイタリアで使われる比喩からきていて、ちぐはぐで場違いな物事を指す時の言い回しだそう。ヴィアンの「北京の秋」みたいなもんか?とにかく、この聞いたことない出版社から出ている本は、可愛くて愛おしい本なのだ。出会いの顛末はこうだ。

 先週の日曜に、上賀茂の北山通りにある「ヨージク」というロシアカフェでビーフストロガノフやペリメニのランチをいただいて、店を出たところ(ちなみにヨージクって、ロシア語でハリネズミのことなんだって)その場所は外回りに階段がある入り組んだビルで何軒かの店があり、そのうちの一軒がちょっと変わった本屋だったからのぞいてみたのだ。ボーイングなどの精緻な模型や、海外製の文具に囲まれて一面だけ本棚がしつらえてあり、店のコンセプトなのか店主の趣味なのかちょっとクセのある本が並んでいた。五十音順でもなく、出版社別でもなくアトランダムに収納されている背表紙を眺めているだけで楽しいのだが、その中に本書が紛れこんでいたというわけ。ジョン・ウィリアムズ「ストーナー」とジョージ・ソーンダース「恐ろしくて短いフィルの時代」の間に挟まれていた本書は、一巡目はスルーしたのだが、二巡目に抜き出して手にとってみた。同じ作者で「ぼくのがっかりした話」もあり、そちらが最初に出版されたみたいだが、本書のほうが気になった。タイトルゆえに。  

 これといって抜きんでた作品があるわけでもなく、読んだしりから忘れてしまいそうな話ばかりなのだが、器から溢れた水がこぼれて自然にかえるように、気負いなく当たり前に終わるお話がナンセンスでいいのである。なんか脳みそのデトックスって感じで、すっきりした。こういう読書も必要だね。
 

 
  • 掲載日:2026/05/01
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