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軽快でコミカルでちょっと優しい、日本版「異邦人」。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!免許皆伝
コンビニ人間
人間は群れを作りたがるし、群れに入りたがる。どこかの群れの一員となるためには「みんなと同じであること」が求められる。ほとんどの人はそれに応じることができるが、できない人もいる。自分では普通だと思っているのに、群れはその人を「空気が読めない」とか「感覚がおかしい」と言って排除する。群れの一員が、大多数と違う意見を持つ時もある。だが、声高に違和感を唱えることはしない。群れに迎合できない人間が徹底的に排除されてゆく様子を描いたカミュの小説『異邦人』のように、自分に正直に生きすぎると酷い結末が待っているからだ。

死んでいた小鳥を「焼き鳥にして食べよう」と言ったらギョッとされるのに、小鳥のお墓に供えるためにその辺の花を引きちぎって殺すのは良いらしい。小さい頃に自分の感覚が普通ではないことを悟り、なるべく人と交わらず目立たないよう生きてきた恵子が、「コンビニ人間」として生まれ変わったのは大学一年生の春。コンビニのマニュアルに従って行動すれば、普通のヒトとして扱ってもらえる。それどころか褒めてもらえる。恵子が“世界の正常な部品”になれるのは、コンビニの店内にいる時だけだ。

普通じゃない人から見た普通の人の生態が、とてもコミカルに描かれている。恵子が世間との感覚の相違を「いちいち驚かれたり詮索されたり、面倒だし疲れるから合わせたふりをしておこう」と思っている様子も可笑しい。普通度の高い読者には、悟りの境地に達したように悩まず悲しまない恵子がドライ過ぎて、いっそう異質に思える。でも、意見が合えば「そうよねー。」と言って安心しちゃう人々にも「それでいいのかなあ」と疑問を感じてしまう。

お前の常識は本当に正しいのか、自分が正しいと信じ込んでいるお前は、果たして普通のヒトなのか。その問いかけに、思わず「うっ!」と喉を詰まらせてしまうような小説である。価値観が揺らぎかけてきたところへ、すごくヘンテコだけど妙に胸に迫るラストシーンが襲いかかってくる。

人に迎合しないからこそ、常識に引きずられない強さを発揮できる。世間は「異邦人」を排除しようとするけれど、どこかに生きてゆく場所はあるのだ。その場所を力ずくで取り上げることは誰にも出来ないのだと、言われているような気がした。
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  • 掲載日:2016/10/24
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読んで楽しい:13票
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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2016-10-24 15:44

    この本、地元の図書館で読もうとしたら、112人も待たないと手元に回ってこないのです。その超話題作をワタクシ、いただいちゃったのです。それも、桔梗の花のついた美しいカバーと素敵なしおりと、この本を読む人への心のこもったお手紙までつけて。
    嬉しかったwww
    ありがとうございました(^^)

  2. 祐太郎2016-10-24 20:41

    私もようやく明日から取り掛かりますw

  3. Wings to fly2016-10-24 21:28

    ゆうたろうさん
    課題図書倶楽部みたいで楽しい(^^) 書評お待ちしています!

  4. はにぃ2016-10-24 22:32

    こちらこそありがとうございました。
    私が書いた本でもないのに、なんだかうれしいものですね♪
    指名強制書評なんていう強引な遊びがあっても面白いかも(笑)

    祐太郎さんもお待ちしています!

  5. くりりん2016-10-26 18:54

    Wings to flyさんの素晴らしい書評は、潔く切ってると思います。
    祐太郎さんも読むの!?
    書評、楽しみにしています(^-^)

  6. Wings to fly2016-10-26 20:49

    書店員くりりんさん
    わー、ありがとうございます。
    嬉しい(((o(*゚▽゚*)o)))♡
    ゆうたろうさんが、どのように切ってくるか楽しみに待ちましょうね〜♪

  7. はにぃ2016-10-26 23:01

    祐太郎さんにどんどんプレッシャーが……(^-^;

  8. 祐太郎2016-10-27 06:17

    真っ向勝負の書評を構想中です!!w

  9. Wings to fly2016-10-27 08:25

    盛り上がる期待‼︎

  10. No Image
    ねねみみ2026-02-20 16:30

    変わり者が唯一安住した場所がコンビニだったというのが皮肉です。どうせなら市役所とかだったら問題なかったのに。でも変わり者がそんなところで落ち着くはずないし。日本では変わっている人は生きにくいという典型的な小説ですよね。最後はある意味ハッピーエンドなところがいい隠し味となっています。

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