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 大学進学を機におばあちゃんの親友、志桜里さんの家に住むことになった坂中真智。坂の多い街小日向で、志桜里さんをはじめ風変りな人たちとの交流が始まる。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
坂の中のまち
 坂中真智と「坂の中のまち」ああ、そうだったのかと思いつつレビューを綴り、素敵な作品だったけれど、真智とよしんばちゃんとの出会いの描写や、おばあちゃんと志桜里さんの出会いの描写で都バスの料金が足りなくて、志桜里さんがお祖母ちゃんに10円貸してと頼んだ時、「どうしよっかのー。どうしよっかのー」と何度もつぶやいたおばあちゃん。この文章、なぜか知っている!読んだことがある!!でも、この小説を読むのは初めてなのに。モヤモヤしつつ、中島京子氏の最近読んだ本を思い出してみた。女性作家の短編作品「いつか、アジアの街角で」の中で『隣に座るという運命について』が掲載されいたのだ。

 「フェノロサの妻」「隣に座るという運命について」「月下美人」「切支丹屋敷から出た骨」「シスターフッドと鼠坂」「坂の中のまち」「エピローグ」と各章に別れていて短編集に思えるが真智が大学生活を謳歌し、風変りな友人たちと交流していく中で将来を考え悩み、やがて坂の中のまちから巣立っていくまでを綴った爽やかな作品である。文豪ひしめく小日向の町、当然その文豪たちの作品がところどころに紹介されているのも印象的だ。

 中でも文学サークルで出会った不思議な青年エイフク君が紹介した横光利一の『機械・春は馬車に乗って』はちょっと気になる。彼は、「先生の本」と言って真智に貸してくれたのだが。横光利一がM大で教えていたのは昭和9年と教えてくれたのは志桜里さん。ヨネカワ先生、キシダ先生、コバヤシ先生について熱く語るエイフク君は、いったい何者なのか?

 ユーモラスな文章と多くの文豪が登場する上、志桜里さんの家にある数々の書籍に魅力的な登場人物、さらに、思いもよらなかった志桜里さんとおばあちゃんや真智との関係。暗くなりそうな話題や状況もサラッと自然のことのように綴られた内容に読み手もサラッと受け止められるのが良い。コロナについてもふれられているが、エイフク君の言葉
「おおぜいのひとが亡くなったから、不謹慎に聞こえるかもしれないけど」「コロナはなんだかぼくたちに、地球の主役は人間だけじゃないんだと、教えているような気がしてさ」
がとても印象に残った。
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  • 掲載日:2025/06/24
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