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物理好きにはたまらない精妙な描写とワクワクするストーリー展開

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上
病室のような部屋で目覚めた男。コンピュータが女性の声色で何度も彼に問いかける。

『二足す二は?』

まともに言葉が出せない男。女性の声は「不正解」を繰り返す。

室内にはベッドに横たわる男女の死体。ミイラ化している。どうやら長い昏睡状態から目覚めたようだ。ここはどこなのか?自分はいったい何者なのか?まったく記憶にない。横たわる死体は誰なのか?

彼は落下速度計測実験や振り子実験から重力を計算し、ここが宇宙空間であることを突き止める。そして、窓から見える太陽の黒点の移動速度からそれが太陽ではなく別の恒星であることを知る。そして、徐々に記憶が蘇り、自分がライランド・グレースという中学教師であることを理解する。

ここまでで実に70頁を費やしている。

それまでグレースの論理的思考や実験が実に精妙に描かれており、読む者をグイグイ惹きつける。物理好きにはたまらないだろう。

宇宙空間での悪戦苦闘と並行してグレースの記憶が断片的に蘇る様が描かれ、物語の本筋が見えてくる。すなわち・・・

アストロファージと呼ばれる極微小の地球外生命体が、太陽から出力エネルギーを急速に奪い取り、その結果30年以内に地球の気温が10~15℃も下がってしまうという危機に曝されている。太陽だけではない。数々の恒星が感染しその光度が低下しているのだ。ただし、周りと同様アストロファージに感染していると思われるタウ・セチという恒星だけは、全く影響を受けていないことが分る。この謎を解明すべく宇宙船ヘイル・メアリー号に乗ってタウ・セチ星系にやってきたのがグレースを含む3人のクルーだったのだ。

孤独の闘いに挑むグレースに異星生命体のバディが現われる。

グレースがロッキーと名付けた異星人との相互理解が上巻後半に描かれる。共通の言葉を持たない二人がどうやってお互いを理解するまでになるのか?ここでも緻密でロジカルなアプローチが展開され読者を大いに納得させる。

広い宇宙空間で二人が出会う偶然性。同じ問題解決の使命を帯びてタウ・セチにやってきた二人。この二人がどうやってアストロファージ問題に挑むのかが、下巻の読みどころとなる。

『もし惑星の科学が少なければ宇宙船をつくること、できない。もし惑星の科学が多ければ星系を離れずにアストロファージを理解して破壊すること、できる。エリディアンと人類の科学は、両方とも特別な範囲内にある―宇宙船をつくること、できる、しかしアストロファージ問題を解決すること、できない』

グレースの地球での記憶と宇宙空間での奮闘が交互に、そして丁寧に進んでゆき、ロッキーがようやくグレースの宇宙船を訪れるところまでで上巻はおしまい。

下巻に続く。
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  • 掲載日:2026/04/24
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