岩波少年文庫100冊マラソン86冊目。
北欧の昔話風の話は、日本の話ともヨーロッパのお話ともちょっと違っている。妖精がよく登場する点ではイギリスのお話に似ていなくもないが、妖精といってもイギリスの妖精とはかなり違うようだ。
「山のペイッコと牛飼いのむすめ」
ペイッコとは山の魔物のことで、トロルのような存在だろうか。山に住んでいるのに自然が嫌いで、石や鉱物のような無機質なものが好きらしい。このペイッコが牛飼いのむすめを好きになってさらうのだが、むすめは自然や生き物たちが大好き。閉じ込められてしまったむすめがいかにして助かるかの話なのだが、ペイッコの魔法の杖の特性というのが、さらりと書かれているけれどきっと犠牲者が何人もいたのだろうと思わせる意味深なもの。
「ふしぎの花」「夏のサンタクロース」
どちらにも、ヒーシという森の魔物が登場する。ヒーシの魔力はとても強く、「ふしぎの花」ではヒーシに握られた少年の足はけものの足に変わってしまっている。「夏のサンタクロース」では、ヒーシがさらなる魔力を得ようと、サンタクロースの魔法のブーツを片方奪ってしまう。
そんな厄介者のヒーシの迷惑を被ってしまった少年とサンタクロースがどうやってヒーシの災厄から逃れたか。
「小さなヴァイオリン」は、大好きな人のために、自分の一番大事なものを差し出した娘の話。「波のひみつ」は、大好きな人ができたせいで大事なものを無くしてしまった娘の話。どちらもロマンチックな話だが、ひとつはハッピーエンドで、もうひとつは悲劇。
「春をむかえにいった三人の子どもたち」は、書かれた当時のフィンランドの情勢を風刺した話。春の妖精に来てほしいと懇願する子どもたちに妖精が言った言葉が、なんとも手厳しい。
ペイッコやヒーシだけでなく、氷の精や山の精などフィンランドの自然の中に存在するさまざまな妖精たちが描かれている話は、なかなか怖いものも多く、それだけフィンランドの人々が厳しい自然の中で生きているのだということが感じられる。
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