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※ネタバレ注意!

殺し屋がただ一度 誰かを信頼したために起こる悲劇

  • グレアム・グリーン全集〈5〉拳銃売ります (1980年)
  • by
  • 出版社:早川書房
グレアム・グリーン全集〈5〉拳銃売ります (1980年)
 映画化作品では【貸します】になっているが邦題は【売ります】原題は【Hire=借りる】になっているので映画の方が正しい。

 一匹狼の殺し屋レイヴンは兎口というわかりやすい特徴があるため、目撃者を残せない。よって、今回のターゲットである大臣だけでなく顔を見た女性秘書も殺してしまった。報酬を受け取れば終わりだったはずが、受け取った金が盗まれたもので警察に番号を控えられていたため追われる身に。逃亡する途中、盗難事件を追うマザー刑事の恋人アンに出くわすが…。

 レイヴンに殺しを依頼した相手は、大臣を殺して戦争を起こし大儲けしようと企む資本家だ。人殺しで報酬を得るレイヴンももちろん悪人だが、表向き善人を装っているだけ資本家の方が質が悪い。

 レイヴンは結果として戦争を未然に防ぐが、
戦争なんかなんにも害をしやしねえよ ものごとの正体を見せるだけのものよ。みんなに自分の薬の味を知らせるのさ。おれは知ってるんだ。おれにゃ、いつだってずっと戦争だったんだからな

そもそもの動機は復讐心であり戦争を忌避したい思いではない。話を聞いてレイヴンの殺人の意味に気づき戦争を止めようとするアンにしても
彼女は戦争を、ただ自分自身とマザーのために恐れていた
だけであり、国や世界の平和が念頭にあったわけではない。本編のように、善行が必ずしも善に結びつかず、むしろ悪行がかえって善を生むのは、我々が教えられてきたことと矛盾する。しかし実際の世の中には、ねじれた結果の方が多いのかもしれない。

2009年に英国ガーディアン紙が発表した、「英ガーディアン紙が選ぶ必読小説1000冊」選出。

グレアム・グリーン作品
『負けた者がみな貰う―グレアム・グリーン・セレクション』
『おとなしいアメリカ人―グレアム・グリーン・セレクション』
『国境の向こう側―グレアム・グリーン・セレクション』
『事件の核心―グレアム・グリーン・セレクション』
『ブライトン・ロック―グレアム・グリーン・セレクション』
『ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション』
『第三の男』
『ハバナの男』
『恐怖省』
『叔母との旅』
    • 映画『拳銃貸します』ポスター
  • 本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
  • 掲載日:2019/06/22
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