明治時代、看護婦の仕事は賤業(せんぎょう)と言われていた。ドラマでは、コレラに感染した病人の家を看護人が訪れる際、隣近所の人が「そんなに金が欲しいかね」と命まで差し出す賤業という眼差しで取り巻いていた光景を思い出す。そんな時代に看護師として働くのがいかに大変であったことか。
さらに、18歳の大和和の縁談が嘆かわしい。流行り病で亡くなった父に代わって母哲が、裁縫を教えることで生計を支えていた大関家。維新後、大地主として成功していた柴田家に嫁いだ和であったが、22歳年上の夫には何人もの妾がおり、結婚後も別宅で妾と子どもと暮らしていたという。明治時代一夫多妻制が認められており、民法によって一夫一婦制が成立したのが明治31年だったということを初めて知り本当にギョギョギョである。
女性の立場がこんなにも疎んじられていることに憤りを感じつつも、大和和と鈴木雅が看護婦として学び看護婦の制度化や技術向上、廃娼制度に尽力し、和は廃業娼妓たちの授産施設を開館し自立のための職業訓練まで施したという。この施設現在でも同じ名称で存在するが、今では夫のDVなどで家族と一緒に暮らすことが困難な妊婦や子育て中の女性が暮らす施設ではないかと思う。娘が学生時代アルバイトをしていた施設名だったので少し驚き、少しだけ誇らしく思った。
結婚し子どもが生まれると、子育てをしながら仕事をすることがいかに大変であるかがわかる。ドラマで見るよりもはるかに辛い結婚生活であったことがこの本には綴られている。どう頑張ってももう駄目だと思った時、思い切って決心し、人生を踏み出しチャレンジすること、人との出会い、繋がりによってで道が開けることが和や雅の生き方から大いに得ることがある。史実に基づいたこの作品では、どんな時代でも前向きに生きて来た女性、自分にできることを精一杯頑張った女性が結局は幸せをつかめるのかもしれないと思った。
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