血まみれのドレスを着て何かに驚いているらしい女性が表紙になっています。
女性はもちろん主人公のマルゴなんだろうけど、はたして誰の血にまみれているんだろう。
王妃マルゴはカトリーヌ・ド・メディシスとフランス王アンリ2世の三女です。
父と兄がなくなり王位についたシャルル9世の妹で、物語は彼女がナヴァール王アンリに嫁ぐシーンではじまります。
政略結婚とはいえ婚礼の夜に、新郎であるナヴァール王アンリはソーヴ夫人に言い寄り逢い引きの約束を交わし、新婦のマルゴの部屋にはかつての恋人ギーズ公が忍んで来ていた。
デュマの作ですが、原作だけでは時代背景がわからないだろうと、所々に編者の鹿島茂氏の解説が入っています。
史実はこうだけどデュマはこんな創作をしたとか、登場人物のその後の人生を語っていて面白い。
この解説曰く、マルゴが夫アンリを同盟者として受け入れたが夫としては拒否した原因にアンリの強烈な体臭をあげている。
風呂に入ったり体を拭くなんて習慣がない野育ちの男だったこと。
そしてニンニク料理を好み当然歯を磨くなんて習慣もなさそうなので、清潔好きのマルゴには受け入れられなかったとか。
ソーヴ夫人はよく耐えたものだ。
ユグノー派のナヴァール王とカソリックの王家の婚姻による結びつきでユグノー戦争にも和平が結ばれたかのようだったが、実際には婚礼のために集まってきたユグノーが虐殺される。
聖バルテルミーの虐殺です。
物語はシャルル9世が死ぬまでで終わっているが、作品にはこの戦争による緊張感が常にただよっていた。
マルゴと同盟を結んだナヴァール王アンリは虐殺こそ生き延びるが、常に見張られシャルル9世の顔色をうかがう毎日だったようです。
マルゴは王妹にしてナヴァール王妃という立場から命の心配はなかったが、自分が生んだ子供でさえ政略の駒に使う母親の動向からは目が離せなかった。
そんなマルゴが愛人にしたのはユグノー狩りにあって彼女に助けを求めたラ・モール。
美しい顔をしたプロバンスの若者だ。
危機の中だからこそ恋も燃え上がる。
逢瀬を重ね、夫であるナヴァール王も黙認する仲となっていたが、死が2人を引き裂いた。
国王を呪詛したと濡れ衣を着せられてラ・モールは処刑される。
たとえ数週間後には新しい恋人を作ったマルゴですが、ラ・モールとの愛は物語として永遠に残っていく。
悲恋だけでなくカトリーヌ・ド・メディシスの権力欲や兄弟間の醜い争いを、毒薬や暗殺といった小道具でスリルいっぱいに描いていました。
そして鹿島氏の解説も面白かった。
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