「熊が人を襲うとき」を書いた米田さんが今年の4月に出したばかりの本。昨年秋からの街中へのアーバンベアーの出没問題が注目されて書いたのだろう。
クマ研究家としての米田さんは人生の前半は秋田で、後半は広島を中心に西日本でクマの生態を研究し続けている。
米田さんは広島に移住してから捕獲したクマの奥山放獣に取り組んで来た。時代の関心がクマの駆除から自然環境の保護に移ってきたからだが、現状では市街部で捕らえたクマを山に放すのは問題があると考えている。
人里に出没する熊は、単に山で餌が乏しいからというだけではなくて、子連れの母熊が雄熊の子熊への攻撃を恐れて、人の気配のする里へ逃げてきたという経緯があり、奥山へ戻してもそこではもう生きてはいけない。
特に里山で母熊が駆除されて残された子熊は、母親と別れた場所に戻ってくる習性がある。生まれて1歳の子熊は母親から冬眠の仕方を教わらなかったので、冬でも餌を求めてうろつくことになるとか。
秋田県では離農した酪農家の放牧地でダイズやソバが育てられているが、この畑に子連れの母熊が集まってくるとか。著者は至近距離からこれらの熊たちの挙動を撮影していて、この本も多数掲載されている。熊はよく昼寝をすると著者はいう。熊達の姿はユーモラスで人間臭い。
熊が人を威嚇するやり方が書いてある。両手両足で交互に飛び跳ねて地面を打ち、10mまで近づいて唸り声を挙げ、また離れて飛び跳ねる。この場合は人間が動かなければ攻撃はしてこないとか。
秋田県では以前は盛んに行っていた春の熊の巻き狩りを再開するというが、春の猟にはある問題がある。春に早くに越冬から覚めて行動するのは若い雄熊で、これが駆除されてしまうと、山には年長の雄熊と子連れの雌熊が残ることになり、熊の年齢のバランスが崩れてしまう。
ではどうすればよいのか、著者も明確な答えはないようだ。兵庫県で長年実施されてきたような、クマの個体識別と統計的な推定により、地域の熊の頭数の把握を全国的に行うことが必要かもしれない。
著者は日本人にとっては山の守護神だったとして、これからも人との共存を望んでいるが、相手は人の命を奪うこともある猛獣だから、答えは容易には見つからない。
ところで先日(4月19日)、仙台市内のマンションの敷地内に迷い込んだ熊が駆除された。熊は市内を流れる広瀬川を伝って山から市街地に下りてきたと思われる。また昨年の秋には私の住む地区でも熊が複数回目撃された。これも広瀬川を移動してきたと思われる。
実際に熊に会った人は少ないが、人間の居住地の近くに熊が住んでいる現状は忘れないようにしたい。
この書評へのコメント