雨宮大夢(あまみやひろむ)は高校3年生で、介護の専門学校に進むつもりだ。チェロを子どもの頃から習っていて、本当は音大に行きたいのだが、家には経済的な余裕がない。
ルカ・デリッチというクロアチア人の先生に習っている。多発性硬化症で、今は車椅子生活だが、たくさんのコンクールで優勝した実力の持ち主だ。
金がない大夢だったが、ルカのおかげで私立の音大に入ることができた。
しかし大夢の演奏は、きちんと弾けているが、自分の音楽ではなかった。ルカ・デリッチの真似であり、オリジナリティーが欠けていたのだ。
大夢はルカ・デリッチの名前を冠したコンクール(ルカ・デリッチ国際コンクール)に出ることを決めていた。ルカはこのコンクールを形作るためのキーパーソンなので、クロアチアに帰っていた。
コンクールのためにザグレブに行った大夢は、日本女性のギターとチェロの双子デュオ、歌恋(かれん)と歌音(かのん)に出会う。歌音はこのコンクールの出場者だった。
ルカの元弟子、高祖弦(こうそげん、日本人)も出場した。悪魔的な演奏をする天才で、ルカを憎んでいるようだ。「このコンクールをぶっ壊す」と言っていた。
歌恋と歌音の姉妹も、かなり波瀾万丈な人生を送ってきたようだ。
いろいろな人がそれぞれの想いを抱いてコンクールでの優勝(あるいは、入賞)を目指す。
ちなみに、チェロの音色は人間の声に似ているため、チェリストは弾くことを「歌う」と言う。
大夢と歌音、そして高祖はファイナルまで行けるのか。それとも、誰かが入賞(あるいは、優勝)してしまうのだろうか?音楽小説はいくつか読んだが、その中で傑作だったのは「蜜蜂と遠雷」だった。コンクールの表現が上手く、引き込まれるように読んだのを覚えている。悪いが、本作はそれほどではなかった。まだデビューして間もないようだし、これからもっといい小説を生み出すと思う。期待したい。
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