161人に、新刊・既刊を問わず、2025年中に読んだ本のなかから、印象深いものを挙げてもらった本。200頁ほどの本だから、割ると、一人1頁くらいになるが、なかには3頁くらい書いている人もいる。
本が好きなひとにとっては、たまらない魅力のある本である。
しかし、同時に、こんな本を読んでしまうと、次に読みたい本が無数に増えてしまうかもしれない。そういうことを覚悟のうえでなら、どうぞ手にとっていただきたい。
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筆者が、この人の選書はどうなったか、を知りたくて、まっさきに読んだのは、管 啓次郎さんだ。
一度お呼びして講義してもらったことがある。筆者がひそかに、この方の書く日本語は現代の男性のなかでオプティマムではないかと思っている方である。それは、創作においても、翻訳においても。
ちなみに、女性で、同じことが言える方は、残念ながら、今年の本書には収められていなかった。
みすず書房のアンケートに答える人は、最大5冊くらいまで挙げているようだ。
管さんは5冊挙げている。
このうち、あ、これはすぐに読もうと思ったのは3冊くらいあったが、実際に入手できるかは運次第だ。
本は、読むタイミングがあるので、運よく手に入っても、そのときの事情で読めないこともある。が、あとになって、ふと目にとまり、あ、これ、これ、これを読まなくっちゃとなって、読めることもある。
しかし、何を読むつもりか、書いてしまうと、読めないおそれ(?)もあるので、書かないでおこう。
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管さんの選書とはべつに、管さんの本を挙げている別の方がおられて、おやっと思った。
それは、生井 英考さんという、浅学にして存じあげない方だが、「(アメリカ研究)」と書いてある。その方が、選書とはべつに、管さんが年末に出したという、スティーヴン・クレイン詩集を挙げておられる。この本が出たのは気づいていなかった。こういう情報はありがたい。
生井さんは、クレインの The Blue Hotel (1899) を〈愛読して、訳したいと思った〉ことがあるという。
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もう一人、清水 裕貴さんという写真家の方が書いている文章も、おもしろかった。清水さんは、ドラマ「相棒」の脚本でも有名な太田愛さんの本の装画として自身の写真作品が採用された縁で、太田さんに出版祝いで会ったという。
清水さんによると、太田さんは、ガルシア・マルケスやボルヘスの名を挙げたとのことで、そこから、〈彼女の文学的な原体験に近いのは短編の方なのかもしれません〉と書く。
さらに、太田さんについて、〈エンタメ長編の中にも、彼女の心の奥底にあるレンズを通し、ざらざらしたフィルムで撮影したような情景描写が見られ、長編も短編も同じ人間の思考の産物なのだと思わされます〉と、写真家ならではの言葉で活写する。
こんな文章を読むと、ますます、本が読みたくなる。
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