二千年前の日本にあった日高見(ひたかみ)国の王子タケルが戦乱のさなか現代の日本に時空ジャンプし、祖国を救う共鳴の技術を携えて帰還する物語。
タケルは〈生まれつき「共鳴り(ともなり)」の性分を持つ〉(40頁)。
タケルの祖母カネ婆によれば、タケルは〈人の心の波長に、誰よりも敏感な魂を持って生まれた〉のである(21頁)。
それは〈王としての弱点〉ではないかと問うと、カネ婆は、いや、〈お前のその優しさは、弱さじゃない。最強の『調律器』なんだよ〉と言い聞かせる。
ところが、平和な国である日高見に、ある日、〈ハタレ——心の闇に食われた者たち〉が現れ、王国は一挙に暗黒に圧潰されそうになる。
その闇の勢力の力は圧倒的で、またたくまに父王クニテル(アマテル・クニヒト)をはじめ、タケルの許嫁であるホノコ(セオリツヒメ・ホノコ)の身にまで危険が迫る。ホノコは〈聖なる「アワの歌」を継承する歌い女(巫女)〉である(3頁)。
タケル自身も絶体絶命の危機に。日高見の最期が迫る。
ところが、父に槍が刺さる瞬間に、その〈背後の遺跡——『神の座』と呼ばれる磐座(いわくら)が、脈打ち始めた〉(53頁)。
それは〈高さ十メートルにも及ぶ巨大な花崗岩が三つ、互いに支え合うように組み上げられ、正三角形の洞(うろ)を作り出している〉(53頁)。
この三角形の中心空間に、タケルは吸い込まれた。まるで〈別の次元への入り口〉を通ったかのように。気がつくと、タケルは現代の東京の路上にいた。
ここで、タケルが古代人であることを見抜く人物に出会う。考古学と音響学の権威である里村教授である。家に連れて帰り、現代の音響技術を教える。
教授は、日高見に帰りたがるタケルに、〈入口があったなら、出口もあるはずだ〉と告げ、そのための音を探しに、日本中の古代遺跡にタケルを連れてゆく。教授の娘のミオ(美音)も連れて。ミオはストリートミュージシャンをしている。
果たして、彼らはタケルが日高見に還る方法を見つけることができるのか。
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この物語は、日本の古代史、特に日高見や、巨石遺跡、アワの歌、ヲシテ文字などに関心があり、さらに古代の音にも関心ある人が読めば興味深いだろう。
ただ、筆者として唯一不満なのは、タケルが帰還に際し携えてゆく音叉の周波数だ。440ヘルツなのである。
それはないだろうというのが率直な感想である。〈医療用の特注品〉という設定なので仕方ないかもしれないが(100頁)。
ソルフェッジョ理論に共鳴する筆者ならば、432ヘルツ、または、444ヘルツにする(下の写真)。あるいは、528ヘルツでもよいかもしれない。
この音叉は、本物語では非常に重要な役割を果たす。
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