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米の暗号解読者の先駆けとなった女性の活躍を描く

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
コードブレイカー――エリザベス・フリードマンと暗号解読の秘められし歴史
 本書で描かれる女性はエリザベス・スミス・フリードマン。米の暗号解読の基礎を築いた女性であります。その夫であるウィリアムも優れた暗号解読者であり、これまではウィリアムの業績ばかりが取り上げられてきたようですが、いやいや、妻のエリザベスも非常に優秀な暗号解読者だったんですよ、ということで、エリザベスに焦点を当てた本になっています。

 エリザベスは別に暗号解読が得意だったとか、数学その他の素養があったというわけではないんです。エリザベスは23歳の頃、シカゴに出てきて職探しをしていたのですが、その際、暗号解読の助手を探していたフェイビアンという富豪から半ば強引に引っ張られ、フェイビアンがカリフォルニアのリバーバンクに建設していた研究所に連れて行かれます。

 フェイビアンは金に飽かせてここで様々な研究をさせていたのです。
 その中の一つに、シェイクスピアはベーコンであり、それはシェイクスピアの著作の中に暗号として示されていると信じて疑わない婦人の研究があり、その助手としてエリザベスは採用されたのです。
 エリザベスは、最初は暗号なんてまったく分からなかったのですが、ここで暗号の考え方、基礎のようなものを学んだのですね。

 また、ここで将来の夫となるウィリアムとも知り合い、二人は拘束の厳しいフェイビアンの元から逃げるようにして飛び出し、その後、政府関係機関などに雇われてそれぞれが暗号解読の手腕を発揮していくことになります。

 そもそも、この時代、米にはまともに暗号解読ができる人材などおらず、組織も全くなかったのです。そんな中で、手探りのようにして暗号を次々と解読していったのがフリードマン夫妻だったのですね。
 解読する暗号は様々で、犯罪捜査関連も多々ありました。
 創設されて間もないFBIには暗号解読ができる者はおらず、その仕事も回されてきたのですね。

 この関連で描かれるのですが、FBIの初代長官であるエドガー・フーパーって本書の中ではかなり悪く書かれております(笑)。虚栄心が強い男だったのか、何でもかんでもFBIや自分の手柄にしてしまい、マスコミを利用して大々的に宣伝したようなんです。
 ですから、暗号解読やギャングらの摘発にしても、それはエリザベスらの貢献があってこそなのですが、その辺りは全部ネグってしまって自分たちの手柄にしてしまうんですね。

 エリザベスとウィリアムは途中から別々の機関で仕事をするようになり、戦争が始まるとドイツや日本の暗号解読にも携わったようです。
 スパイを摘発するための暗号解読にも貢献したのですが、暗号って解読してもそれを知られないことが肝心。知られてしまったらすぐに暗号を変えられてしまうから、気取られないようにして情報を得た方がずっと得策なのです。

 米の多くの政府機関はそう考え、スパイも泳がせていたというのに、功名心に走ったエドガー・フーパーはFBIに摘発させ、しかも失敗しちゃうんですね~(フーパーはそれでも成功だ! と喧伝するんですが)。
 以来、米の他の機関はFBIを鼻つまみにし、情報を流さなくなったとか。

 戦時中の暗号解読というとエニグマが有名です。私もエニグマ関連の本は何冊か読んできたのですが、そこで描かれるのは英でアラン・チューリングが突破した話ばかりでした。 しかし、実はエリザベスも独自の方法で(しかも、チューリングのボンブのようなコンピュータの祖型みたいな機械を使わずに)エニグマを解読していたんですね~。
 これは知らなかった。

 夫のウィリアムの方も、日本が使っていたパープル暗号を解読しており、実は真珠湾攻撃もあるいは阻止できたかもしれなかったそうなんです(軍内部の不手際があり攻撃を許してしまったのだとか)。

 これまでは、女性ということもあり、その業績がなかなか取り上げられなかったエリザベスに焦点を当てた本書は良い着眼点だと思いました。
 エリザベスは激務の中、自身の業績を誇示することもせず(厳しい保秘もあったのですが)、家庭を守りながら淡々と暗号を解読していったのですね。そんな当時の女性の活躍を読める労作でありました。


読了時間メーター
□□□     普通(1~2日あれば読める)/444ページ:2026/04/01
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  • 掲載日:2026/05/10
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