水族館でなら見たことがあるオオサンショウウオ。
自然界で目撃することなんて考えられない。
もっとも絶滅危惧種であり、複数の法律で保護されているから、うっかり目撃することなんてありえないんだろうけど。
それにしても、オオサンショウウオが生息する河川ってどんなんだろう。
いや、そもそもオオサンショウウオってどんな生き物なんだろう。
本書の表紙を見て興味がわき、本書を手にしていた。
オオサンショウウオもまた生きた化石ということだ。
なんでも2300万年前の化石種と骨格が変わらないとのこと。
オオサンショウウオは冬眠をしないというが、恐竜時代に冷たい川のなかに住み、生き抜いてきた戦略のなごりかもしれないのだそうだ。
両生類なのに冬眠しないなんて!
しかも、生息域は西日本でも標高が200~800mの山間部になるという。
800mと言えば、冬は相当に寒いだろう。
そんな場所を生息地としながらも冬眠をしない戦略は、現代に生きる種だけを観察していても解明しないかもしれない。
やはり、長い期間を生き抜いてきた戦略の賜物か。
子育てにも独特の戦略がある。
オオサンショウウオのオスで、体が大きく力強い個体はヌシとして権勢を誇る。
産卵巣穴を設けて、メスの到来を待つ。
他のオスどもはけっして寄せ付けない。
しかし、メスが産卵をするタイミングでは、ヌシは他のオスの侵入を意に介さなくなる。
そして、メスが卵塊を生むと、そこにヌシをはじめとするオスどもは精子を放出する。
産卵のタイミングでヌシが他のオスの侵入を許容する背景としては、メスがオスの攻撃性を和らげるフェロモンを出しているからではないかと指摘されている。
いずれにせよ、さまざまな遺伝子を獲得せんとするメスの戦略がそこにはあるのであろう。
オオサンショウウオは中国、アメリカにも生息する。
そして、いずれにおいても絶滅が危惧されている。
人間は世界中で繁栄をしてきた。
もはや生物の絶滅にも関与するほどの影響力すら持ち合わせてしまっている。
しかしながら、地球上においては人間も弱い存在であることに変わりない。
自然の猛威を前では、抵抗するにはあまりにも脆弱な力しかない。
自然の猛威とまでいかずとも、自然環境課での人間はあまりにも弱い。
初秋の山で一晩過ごすだけで命を失ってしまうことだってある。
ある意味、人間は地球上に住まう生命体のなかで、圧倒的に弱い存在なのかもしれない。
オオサンショウウオは絶滅が危惧されている。
そんな環境下で人間が平然と生き抜くことが、果たしてできるものだろうか。
さまざまな生物について学ぶことは、自分たち人間が生き抜く道筋を学ぶことにも繋がるはす。
本書は生き残りの術を学ぶうえでも重要な1冊と言えよう。
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