なりゆきで生まれてしまった父親のいないシルバーは崖の上に斜めに突き刺さっている家に母親と二人で住んでいた。
ある風の強い日、母親は突風に吹き飛ばされ、斜めの家から海に落ち、十歳のシルバーは一人になってしまった。そうして彼女は灯台守の見習いとして、盲目の灯台守ピューと共に灯台で生活をすることになった。
シルバーはピューから話をしてもらう。どんな灯台にも物語がある。船乗りが陸に上がったとき、灯台守が船乗りに語って聞かせる物語。そしてピューは彼らが今いるソルツの灯台の物語を語りだす。灯台の光を絶やさないようにするには物語を覚えなければならない。
物語の始まりは1802年、一隻の船が大破し、男たちは海に放り出され、人を寄せ付けない化石のような町ソルツに打ち上げられた。その一人、ブリストルで栄華を極めた商人ジョサイア・ダークはソルツに灯台を建設する。灯台が完成した同じ年、彼に息子が生まれた。バベル・ダーク。
ケンブリッジで勉強をしていたバベル・ダークは、ブリストルの商店で美しい娘モリーに恋をする。彼はモリーを誘ってダーク家の庭でりんご摘みをした。数日後、彼らは愛を交わした。バベル・ダークはモリ―のことを白い果肉とほのかな桃色がかったリンゴのような女性だと考える。
しかし彼はモリ―とは結婚せず、教養のある良家の娘と愛のない結婚し、ブリストルを離れ、ソルツの牧師となった。
バベル・ダークが生涯愛したのはモリーただ一人だった。
「ピュー。どうしてスコット大佐たちは死んじゃったの」
「スコット大佐は南極に到達したが、アムンゼンに先を越されて帰りの気力が残っていなかった。人間、心がくじけちまったらおしまいだ」
そして、バベル・ダークと以前から付き合いのあったロバート・ルイス・スティーブンソンから「ジキル博士とハイド氏」の本が出来上がったと彼のもとに送られてきた。
バベル・ダークが誠実であったから理由を言わずモリーのもとを去り、誠実であったから、ソルツの生活を壊さなかった。
現実をみると、灯台は無人化されることになった。灯台守ピューとシルバーは灯台から出て行かなくてはならない。おそらくピューは、シルバーはもう一人で生きた方がいいと考えたのだろう。シルバーは戸惑いながらも、住まいを持ち、愛する人に愛しているいい(ヨットの前のガードマンだと思うけど、奥さんがアルツハイマー?何歳だ?)、彼女の物語を生きていた。
「オレンジだけが果物じゃない」「サクランボの性は」(いずれも名作)に続いて3作目のジャネット・ウィンターソンの小説を読んだ。
彼女の小説のベースには孤独感があり、世間一般の普通の人々や学校の先生の言動に対しての訝しみや違和感がある。そして、旧約聖書の物語やギリシャ神話等の寓話が出てくるが、それが全体の話を一段と深いものにしている。なによりも、彼女の話は面白い!
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