若い修道女にして法律家でもあるフィデルマが出会う事件を追った短編集です。
最初の事件はローマからフィデルマが所属するキルデアの修道院へ帰る途中に立ち寄ったニヴェルの修道院での話です。
ベルギー中部にあるニヴェルの修道院では、フィデルマの旧友であるボルゲルが修道院長となっていた。
再会を喜び合う二人ですが、フィデルマの訪れは修道女が森で殺されたという知らせの直後だったようです。
旅の埃を落とす間もなく、遺体を回収しに行くボルゲルに同行するフィデルマだった。
殺された若い修道女は撲殺された上に、美しかった顔をナイフで切り刻まれていた。
その犯行から強い憎しみを感じ取ったフィデルマは静かに犯人を名指しするのだった。
続く「汚れた光輪」では、修道院で殺人事件が起きたため法律家であるドーリィーとしてフィデルマが呼ばれるところから始まります。
殺されたのは天使のような姿と歌声を持つ若い修道士だったが、すでに犯人は捕らえられているという。
だが脱線しがちな修道院長からよくよく話を聞いてみると、遺体のそばにいた老女が犯人として牢獄に入れられてしまったらしい。
それだけで犯人だと決めつける人々へ苛立ちを隠せないフィデルマですが、周囲の人々から被害者の話を聞いていくうちに天使の顔の裏側が見えてきます。
真犯人が張り巡らせた何重もの罠を見事に突破して真相にたどり着くフィデルマだった。
アイルランド西南部海岸の孤島で世間から隔絶された修道院へ書状を届けに行ったらいくつもの遺体と遭遇するという事件や、高価な聖具の窃盗と絡んだ二つの殺人を解決する事件も、持ち前の注意深い観察力と心理洞察で解決していく。
最後の「ウルフスタンへの頌歌」は七世紀の政治情勢が深くかかわった話だった。
フィデルマが「お師匠様」と慕うラズローン司教はダロウの修道院長で、ダロウ修道院は学問所としてアイルランドだけでなくブリテン島からも学生が押し寄せてくる。
学問を治めに来る学生の中には、親や王に命じられてダロウへやってきた王族もいて、サクソン人とブリトン人は常に反目し合う間柄だ。
武器の携帯が禁じられているからかろうじて刃傷沙汰にまではならないという緊張感あふれる学生生活ですが、とうとうサクソン人の王子が何者かに刺殺される。
しかも現場が密室だったというので妖術による殺人だという流言まで出てきます。
女性蔑視の傾向が激しいサクソン人たちに苛立ちながらも密室トリックを見破るフィデルマだった。
どの話も謎解きを楽しめる短編集でした。
この書評へのコメント