表紙の青でペイントされた人のシルエットは、ムンクの『叫び』を連想させます。
ムンクの絵、中央の人物は「叫んでいる」のではなく、「自然を貫く巨大な叫びに圧倒されて、耳を塞いでいる」のだそうです。知らなかった!
そう理解すると、このよくわからない小説も解釈できるような気がしてきた。
主人公の早野さんは、いろんなことで追い詰められていったのかもしれない。
恋人と同棲することになって茨木(大阪府)の2LDKに引っ越したのに、彼女は姿を消してしまった。そんな時、河川敷で銅鐸を鳴らしている男と出会った。浮浪者と呼んでもよい男を早野は「先生」として崇め、銅鐸作りを習うようになる。
先生は銅鐸作りのセミナーで第二次世界大戦中に満州に渡った二反長音蔵と川又青年の話をする。「お国のため、天皇のために苦労してケシを栽培し、阿片を製造したのに報われない。一言でいいから労って欲しいと彼らは願っている」と。この二反長音蔵は実在の人物で「日本の阿片王」と呼ばれたらしい。
しかし先生が話すと荒唐無稽に聞こえて滑稽だ。その毒気に当てられたのか、あるいは茨木の地縛に取り憑かれたのかわからないけど、早野は少しづつおかしくなっていく。
早野はセミナーで知り合った“しおり”さんと付き合うようになり、デートで万博に行く。その日の万博には先生も講演会講師として来ており、天皇・皇后の行幸もあった。早野の前には川又青年が現れて(これは早野の幻想?)、早野は衝動的に行動してしまう。
やっぱり芥川賞受賞作はよくわからない。
この書評へのコメント