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パワーズの今度の作品は海洋環境保護がテーマか?

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
プレイグラウンド
 リチャード・パワーズ、好きなんですよね~。邦訳されている作品は全部読んできたのですが、本作はちょっと見落としていて気付くのが遅れた~。
 「こんなの出てたんだ!」と、慌てて図書館蔵書を検索したのですが……ない!
 仕方ないなぁ……ということで他館取り寄せ依頼をかけ、ようやく東京都立図書館から借りてきてもらって無事落手いたしました。

 さて、本作は基本的には三人(四人)を軸とした物語であります。
 一人は幼い頃から海に魅せられ、アクアラングが開発され始めたころからこれをつけて大変長時間の潜水経験を積み、深海調査等にも参加してきたイーヴリン・ボーリューという女性です。
 後に彼女は自分の潜水経験を本に書き、これが大ヒットします。
 物語のラストの方ではポリネシアにあるマカテア島に移住したんですね。

 次は白人のトッド・キーンと黒人のラフィ・ヤングの二人。
 二人は大変優秀な頭脳の持ち主でイリノイ大学に進学した際に知り合い、親友となります。トッドは当時まだ動き出したばかりのコンピュータに関心を持ち、そちらの道へ。
 ラフィは幼い頃から父親に大量の本を(最初は強引に)読ませ続けられたこともあり、誰も聞いたことがないような本に没頭し、図書館の一角に自分の居場所を作ってしまった男性で、文学の道に進んだのでしょうかね。

 この二人に絡んでくるのがマカテア島育ちのイナ・アロイタであり、イナは後にラフィと同棲するようになるのですが、ラフィの怒りを買ってしまったイナがそのことをトッドに相談しに行ったところをラフィに見つかってしまい、事態はさらに悪い方へ。
 二人は破局したと思われたのですが……。

 さて、問題のマカテア島ですが、かつてはリンの産出が大規模に行われ、その自然は破壊されたのですが、その後、リン鉱山が閉じ、ようやく当時の爪痕が回復してきています。
 人々は漁労をして暮らしており、確かに西洋社会から見ると不自由な生活とも思えるのですが、それに満足し、自然の中で生きていました。

 ところが再び新たな開発の波が押し寄せてきます。
 マカテアの近海に海上都市を建設するというプロジェクトが持ち上がり、マカテアにはその海上都市建設のための施設を作りたいというのですね。
 突然湧いて出たような話に、無理矢理町長を押しつけられているディディエ・トゥーリは困惑してしまいます。
 海上都市を建設しようとする者たちは、島に建設する工場等で働けば高額の給与を支払うし、島のインフラも整備するという『報酬』も提示してきており、それは確かに魅力ではあったのです。

 自分には決められない……。住民投票を行いたい。マカテア島はフランス領でしたので、本国にそう打診するディディエ。
 住民集会を開き、プロジェクトのことを知らせ、住民投票にかけたいと提案します。
 「誰に投票権があるの?」
 話はそこからです。島の住民数はさほど多くはなく、非常に直接的な民主主義が行われるのです。
 「自分の名前を書ける者なら子供にも投票権を与えるべき」という意見が支持され、そのような条件で投票が行われることになります。

 海上都市建設を担う会社からはプレゼン資料や、何にでも答えるというAIが送られてきたりもするのです。
 さて、このような状況下、「え? そういうことになっているの?!」と驚くのは、破局したと思っていたラフィとイナが結婚して子供までもうけ、マカテア島に移住していたのです!(そうなる詳しい過程は描かれていませんのでちょっとびっくり)。

 また、前述の通り、イーヴリンもマカテア島に移住しているのです。

 ……加えて……。
 私の集中力が欠けていたのか、ここはパワーズのマジックなのか。「あれ? 死んだと書かれていなかったっけ?」的な、状況が出てくるのです。
 あるいは、それは……。
 いえ、ここまでの過程で、ラフィはある本に魅せられ、もしかしたらその研究を進めることにより、幼い頃失った妹(その死は自分の責任だとラフィは自責し続けています)をよみがえらせることができると考えているようだという辺りと関わっているのでしょうか?
 ちょっとこれは読み直し必須だな。

 ラストにもサプライズが仕掛けられており、それにより物語は一つに紡がれるのです。
 この作品、決して読みやすい構成にはなっていないのですよ。中心人物のエピソードが並行して語られ、しかもそれぞれ時制が前後して描かれるので、読みにくいと言えば読みにくい作品なのです。
 また、トッドとラフィのエピソードは、時にトッドの視点から描かれ、その部分のフォントは変えられていたりもします。

 そうそう、タイトルの『プレイグラウンド』とは、トッドが開発したSNSの名前で、これが大ヒットし、トッドは巨万の富を手にするのです。この開発に関し、ラフィの(初見時には「なんでそんなことを今更……」と思ってしまうような)、ちょっといやらしいエピソードも出てきたりします。

 パワーズは、『オーバーストーリー』では植物の保護を書き、『惑う星』では宇宙を描きました。今度は海洋環境保護か……。
 パワーズ、自然保護派になってきているんですかね?

 これまで出たパワーズの本は、結構買って手元にあるのです。本書は図書館から借りてきたのですが(しかも他館取り寄せ)、再読のために買っておくかな~と迷い中。


読了時間メーター
□□□     普通(1~2日あれば読める)/491ページ:2026/03/12
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  • 掲載日:2026/04/16
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