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病死とされた当主リチャードの葬儀が終わったところで、彼の末妹が、リチャードは殺されたと口走った。その末妹は、翌日殺されているところを発見される。リチャードの顧問弁護士に頼まれてポアロが捜査を始めた。

葬儀を終えて
名探偵ポアロ長編第二十五作目。

アバネシー家は、先代当主のコーネリアスが軟膏で稼ぎ、エンダビー・ホールに住む金持ち一家だった。次の当主のリチャードは、ただ一人の息子モーティマーに死なれ、そのショックで亡くなってしまう。本書の冒頭は、題名の通りリチャードの葬儀が終わったばかりの場面から始まる。
リチャードの兄弟で残っているのは、いつも病気を称する三男ティモシー、リチャードの母の晩年の娘でちょっとおかしな言動をするコーラだけで、姻族として次男・故レオの妻ヘレンがいる。三世代目は、いずれもリチャードの故人となった兄弟の子、つまりリチャードの甥や姪たちで、ジョージ、スーザン、ロザンムンドらである。コーラは、ランスケネと言うフランス人の画家と結婚したが、アバネシー家の皆はこの結婚に反対し、20年も音信不通でエンダビー・ホールからはかなり離れた田舎に住んでいた。リチャードの葬儀はコーラと一族の久々の再会で、比較的若い甥や姪はコーラのことなど殆ど記憶になかった。
リチャードの葬儀の後の会食でリチャードの末の妹コーラは葬儀の雰囲気をぶち壊した。小鳥のように首を一方にかしげて「だってリチャードは殺されたのでしょう?」と言いだしたのだった。葬儀に参列した一家の顧問弁護士エントウイッスルはこの言葉に触発され、リチャードの死に疑問を持った。葬儀の翌日、今度はそんな発言をしたコーラが、薪で頭を割られ殺されているのが見つかった。
コーラの遺体の発見者はコーラの家政婦ミス・ギルクリストである。コーラの殺害によりエントウイッスルはますます疑惑を深め、葬儀の翌日の一家の皆の行動を調べる。しかし、いずれも怪しいもので、姻族でありながらリチャードに一番寄り添ったヘレン以外、金に困っていることも明らかになった。また、リチャードは老い先が短いことを意識し、親族を呼び出したり、訪ねたりして、自分の後継者に相応しいか吟味していたことがわかる。結果は芳しくなく、それぞれの親族に欠点があり後継者は選べないと言う結論だったようだ。しかもリチャードはその過程で、不和だったコーラをわざわざ訪問していた。弁護士とは言え、犯罪調査は自分には無理だと思ったエントウイッスルは、旧知のポアロに引退後に申し訳ないが、と調査の依頼をした。当主の居なくなったエンダビー・ホールは売りに出されたので、ポアロは、海外避難民の居住場所を探すポンタリエ氏と言う偽名でエンダビー・ホールに乗り込み調査を開始した。

金持ちの一家にまつわる殺人事件は、著者のお得意で、本書もその一冊。トリックやプロットはそれぞれ異なるものの、似た様な登場人物構成の作品は、「ポアロのクリスマス」「死との約束」などが挙げられる。いずれも一家の金が焦点になる作品である。ここまで読んでくると、これらの作品に犯人に関する共通するあるパターンが存在することに気づくのだが、それを書くと、ネタバレになるのでここには書けない。必ずしも金に関する事件ではないが、「杉の棺」もこのパターンに当てはまる作品と言える。興味のある人は読み比べてみるとよい。以前の作品を読んでいながらも、毎回犯人を外すのは女史の工夫の表れか。犯人パターンが似ていても、トリックやアリバイ作りなども違う点が優れていると言う証だろう。本書もトリックは第一級とは言えないものの意外である。ただ、一応、読者が納得できるように何度となく言及はされているものの、犯人の動機としてはこの程度で殺しなどするのかな、と思った。
他作品との関連では、ポアロが本書のある登場人物について、「エッジウェア卿の死」(創元文庫の題名は「晩餐会の十三人」)のヒロインに言及している点。確かに、両者の登場人物の職業は共通している。コーラの殺人に関して警察側の責任者はモートン警視だが、ポアロを訪ねたモートン警視にビールを出すのはジョルジュだ、と書かれている。これは「青列車の謎」からしばしば登場する従僕のジョージだろう。本書では何故かフランス語読みにしているが、同一文庫では、常連の登場人物の訳語は統一して欲しい。
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  • 掲載日:2023/07/11
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