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エドガー・アラン・ポーの代表作、「アッシャー家の崩壊」と「黄金虫」を読む。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • 黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇
  • by
  • 出版社:岩波書店
黄金虫・アッシャー家の崩壊 他九篇
ポーの作品をレビューするのは「黒猫/モルグ街の殺人」以来二冊目だ。表題の2作品についてレビューしてみよう。

ポーの代表作と言われる「アッシャー家の崩壊」は以前にNHKの100分de名著に取り上げられたのを観たので筋は知っているのだが、タイトルの「家」というのは建物を指すのか一族を指すのか疑問だった。この本では各短編の前に一ページの解説があって、それを読むと原文では家はハウス(house)のことだと分かった。しかし本文を読み始めると、作者はアッシャー(Usher)という名は元は地名で、今では一族の名でもあり建物の名でもあると書いている。館の崩壊の物語であり一族の崩壊の物語でもあるのだろう。

主人公は幼馴染のアッシャー家の当主に請われてその館を初めて訪れた。建物は古く苔むしており館の正前には黒い沼があった。アッシャー家は直系の一族しか残っていない。当主が亡くなれば一族は途絶えてしまうが、その彼は病気に侵されているようだ。そして主人公が館に来てから数日後に当主の双子の妹が亡くなる。その亡骸は館の地下室に仮置きされた。

ある晩、主人公が当主相手に勇者の竜退治の話を朗読していると、館の奥から竜の叫び声のような物音が、続いて金属性のガシャンという音がしてきた。主人公は驚いて飛び上がった。すると当主は主人公に意外なことを告げた。実は妹は死んでいなかった。生きたまま納棺されたのだと。だからあの物音は妹が棺を抜け出し、地下室を出てこちらへ近づいてくる音なのだと。

部屋の扉が自然に開くとそこには死に装束を着て血まみれの妹が立っており、兄の上に覆いかぶさった。主人公は恐怖のあまり館を飛び出し、後ろを振り返ると、館の中央に縦に屋根から土台まで亀裂が入り、その後ろから真っ赤な満月の光が射し、館は黒い沼の中に沈んでいった。

この話の筋を知った時、なぜかコナン・ドイルの名作「バスカヴィル家の犬」を思い出した。タイトルが似ていたからかもしれないが、こちらの「家」は原題では一族の意味だった。とはいえ、深い森に囲まれた古い封建時代からの館、館の前に広がる底なし沼など印象は似ている。それにバスカヴィル家の犬では年老いた当主が死んで相続人がいなくなるのだが、実は・・・というお話で、アッシャー家の崩壊とプロット上の共通点もある。たぶんドイルはポーの小説を意識していたと思う。ドイルは若い頃ポーを愛読したというのだから。

それにしてもポーとドイルの個性の違いは歴然としている。ポーは物語について合理的な説明など一切しないが、ドイルならなぜ妹が生きたまま納棺されたのか、なぜ館が崩壊したのか、何らかの説明を書いただろう。

「黄金虫」はポーがあの「黒猫」を書いた同じ年に書かれている。ポーの書いた推理小説のひとつに数えられることもある。舞台は米国の東海岸にある、ギンバイカの生い茂るサリヴァン島。主人公はそこに住む友人を訪ねたのだが、彼は本物の金のような色をしたコガネムシ「黄金虫」を見つけたのだという。

これは黄金色のコガネムシに導かれてカリブの海賊が埋めた財宝を発掘するというお話なのだが、これが推理小説に分類されるのは、古い羊皮紙に隠されていた暗号を解読することで財宝の埋められた位置を特定するくだりがあるからだ。この暗号の解読方法はコナン・ドイルが「踊る人形」で拝借している。またポーは羊皮紙の暗号を一種のあぶり出しの技法で描かれたものだとして、使われた化学物質についても言及している。ポーの暗号好きと科学好きはドイルに遺伝したようだ。

ところでこの小説で一番面白かったのは、発掘現場に連れて行った愛犬が土の中からお宝を(正確にはお宝と一緒に埋められていた人骨を)掘り出してしまうところで、日本の昔話を連想してしまった。
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  • 掲載日:2022/08/04
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