♣️フレッド・ヴァルガスはエドモン・ボードワンと組んでアダムスベルグシリーズをバンドデシネで出している。スペイン語やドイツ語に訳されているが、英訳はされていない。
読むのを躊躇していたが、最近の翻訳アプリは優秀なので読んでみることにした。
♠️エドモン・ボードワンとタッグを組んだ本は、二つ。一つはLes Quatre Fleuves(4つの川)、もう一つは本書Le Marchand d'éponges(スポンジ売り)。前者はオリジナルの長編だが、後者はもともとは2002年に出た短編集Coule la Seineの一編Cinq francs pièce(一つ5フラン)をグラフィック化したものだ。
♥️スーパーマーケットのカートを引いて9732個の廃棄されたスポンジを1ユーロ硬貨(原作では5フラン硬貨)で売り歩くホームレスのパイは、路上で襤褸にくるまって寝ていた時、白い毛皮のコートを着た女性の暗殺未遂事件を目撃する。パイは犯行の一部始終を目撃していたが、無敵の人にとって雲の上の人間の暗殺事件なんぞ興味なく、証言するつもりがなかった。事件を担当することになったアダムスベルグは、ホームレスから目撃情報を引き出そうと躍起になる。
それもそのはず、被害者の女性は内務省に勤務している名前も明かせないほどの重要人物で、犯人を直ちに逮捕するよう内務省から圧力がかかっていた。
♦️翻訳アプリでの読書は難ありだった。ボードワンの手書きのフランス語が上手く読み込めず苦戦。どうしたものかと悩んでいたが、OxCrimesというアンソロジーに英訳版Five Francs Eachが載っていることを知り、そちらを読んで内容を補完している。
バンドデシネ版はパリの町並みや地下鉄、セーヌ川など小説では分からない情景を視覚で楽しめるのが嬉しい。英訳版短編には朝の朝食はただパンとしか、書いてないがクロワッサンになっているのもフランスらしい。これがまた絵でみると味がある。
ボードワンの絵をみると私が思っていた以上にアダムスベルグが若い。Five Francs Eachを読むとパリ第5区警察と書いてあるし、ダングラールもいないので昔のエピソードのようだ。
ミステリというよりホームレスと刑事の交流物語だ。スポンジ売りのパイは協力しないと言っていたが、アダムスベルグと散歩するうち打ち解けて、最後には自発的に協力する。その名が指すように(「パイ」は実は「π」でもある)実は数字に強いホームレスで、犯人の顔だけでなく犯人の乗っていた車のナンバープレートまで覚えており、アダムスベルグに情報を教える。
アダムスベルグはお礼に9000個以上ある汚いスポンジに付加価値つける方法をお返しする。直接金を払わないところが粋。
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