深緑野分は「オーブランの少女」「「戦場のコックたち」「ベルリンは晴れているか」を読んでいる。後の2作は戦争もの、戦時もので外国人が主人公。どちらも直木賞候補作となった。今作は女性ばかりの「オーブランの少女」と真逆、すべて男性が主人公の物語集となっている。
危害を加えないストーカー行為、SNSにある情報から個人を特定してリアルに顔を見ることを趣味としている男は、今回もターゲットを絞り、その男のアパートへ出向く。しかし、身を隠そうとして入った藪で、ターゲットの男の部屋を盗撮している男を見つけるー。(ストーカーvs盗撮魔)
紹介したのは現代劇だが、SF的な要素の話も満載だ。見張り塔での狙撃兵の話、危険な太陽の光が1年に1度降り注ぐ世界と隠り世のような空間、自分をいじめる仲間と異次元の遊園地に入り込み、殺人鬼に追われるホラーものなど。ラストの、陸の大半が海に沈み、規制の厳しい政府が、官製の少ない音楽しか流さなくなった中で海賊ラジオ放送を探す篇では少し希望が見えて終わる。
ストーリーの成り行きはダークで、救いが無い。イヤミス風の短編集を意図したそうで、なるほど嫌な感覚があふれ苦い味が残る読後感。ストーカーと盗撮魔はまだコミカルな方だ。
暗さの中にほのかな灯りが見えそうでも握りつぶしたりする。のだが、この絶望感のある設定の中どこかに希望を探すのが人のさがで、この手の話はその希求を目的としているのかも知れない。だから最後には少々のカタルシスが心地よく感じるのかも。
ホラーも多少読むから、読んだことのない展開というわけではなく絶望感の表現も惹かれるものはある。恒川光太郎「南の子どもがよく行くところ」のディスペア度合いといったらなかなかだったし。思い切った設定も結構好みではある。
まあまず、ふむふむ、といった読書でした。作家として深緑野分は興味を持ってるので、また折にふれ読もうかな。
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