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プレカリアートのバイブル的扱いをされているが、純粋に小説としてもイケる

  • 蟹工船・党生活者
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  • 出版社:角川グループパブリッシング
蟹工船・党生活者
『蟹工船・党生活者』小林多喜二著を読む。

『蟹工船』は、何十年ぶりかで読み直す。プロレタリア文学つーよりも、ノンフィクションみたいだという感想以外すっかり忘れていた。

そのときの印象は『「資本」論-取引する身体/取引される身体』稲葉振一郎著のレビューの前半に書いてあるので、そちらをよろしく。


いやあ、『蟹工船』を舞台に描かれた群像ドラマは、資本家vs労働者という階級対立的紋切り型よか、深作の『仁義無き戦い』を思い浮かべるほど、苛酷な環境下、熱く生き抜こうとする迫力があった。搾取される、消耗させられる一方で疎外を感じる暇もない。

しかし、いかんせん短い。作者による附記が最後に掲載されているが、この部分をベースに全面加筆したら、良かったのにと思う。もし少し長く生きていたら、書き加えたどうか。どうだろう。

この本、プレカリアートのバイブル的扱いをされ、売れたようだが、純粋に小説としてもイケてる。


『党生活者』は、初読。「遺作」だそうだ。身を潜めながらも、組合運動の指示やオルグなどに邁進する共産党員、たぶん作者の分身だと思うが、その日々の活動が克明に記されている。反社会的だの危険分子だのと追われているが、お腹は空いている。何か喰いてえ。どことなくユーモアを感じさせる文章。これが読んでいて救いとなる。

関連レビュー
『小林多喜二−21世紀にどう読むか』ノーマ・フィールド著



  • 掲載日:2024/02/19
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