スタートは赤川次郎を思わせ、中学生の息子と同級生の探偵ゴッコが始まると、はやみねかおるの『トム&ソーヤ』シリーズの記憶がよみがえる。
それにしても宮部みゆきは芸の幅が広い。最初に読んだのはたしか『火車』だったはず。『あやし』や『おそろし』といった時代物の怪奇譚もある。先日読んだ『荒神』はまた違って特撮好きのハートをがっちり掴む作品だった。
母親に読ませる本として、宮部みゆきの本を古書店でたくさん買ってあるのだが、なかなか読めずに積み上げてばかり。ちょっとずつ手を付けてみることにした。
これまで氏の作品をあまりたくさん読んだ訳ではないのだが、人間のどうしようもなく悪い部分、弱いところ、ずるい性質など描きながら、それでもどこかで上手く着陸できる方法を見つける印象がある。ことに中学一年生の息子を中心に描かれた本作は、どうしたってそんなにひどい結末にはならないだろう、という勝手な予測を持たせつつ、それでも事態はどんどんと悪い方向に転がっていく。
突然舞い込んだ幸運は、それによって巻き起こるドタバタを笑ってもいられない。妬み、怒りの暴力。世間という顔の見えない圧力。崩壊していくごく普通の家庭。それまで知らなかった両親の顔を知ることになった中一の息子がその騒動によって得られるちょっとした成長。垣間見る大人の世界。
どんな展開になるのやら、と心配になりつつ読み進むと、思ってもみなかった結末。事件の陰にいた思ってもみなかった人物。そしてちょっとだけ明るさの見える将来。成長した息子の姿を想像してほんわかした気持ちになる。
【読了日2026年1月29日】
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