この本が評判になってから既に一年 積んであったこの本に、やっと手をつけました。
長く本を読むことを習慣にしていると、面白い本は最初の数ページを読むだけで判ることが有りますが、これはまさにそんな感覚を受けた物語です。
世界的に話題となるピアニストを出してきたと評判の芳ヶ江ピアノコンクール。
そこに挑む4人のピアニスト達の話です。
伝説のピアニスト ホフマンの唯一の弟子にして、その推薦状を持つ天然の天才風間塵。
かって天才少女の名を欲しいままにしたが、母の死によってステージから遠ざかった栄伝亜夜。
審査員の一人シルヴァーバーグの秘蔵っ子マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。
楽器店に勤め、幼馴染みの妻との間に子供も居るコンクールでも年長の高島明石。
物語はこの4人のコンテスタントを軸に進んでいきます。
神のごとき聴覚とテクニック・表現力を持つジン。
最初は復帰する事に自信が持てないが、予選が進む毎に進化していく亜夜。
実力ナンバー1で表現力・テクニック共不足のないマサル・カルロス。
傑出した天才ではないが、音楽を愛する事に関しては他の3人に負けない明石。
正直言えば、コンクールなのですから、4人はもっと相手をライバル視し、ギスギスする部分も有るのだろうと思っていました。
ところが、明石を除く3人はとても仲が良く、明石も自分に無い才能を持った天才達に圧倒されながら、自己を磨いていきます。
お互いをリスペクトし、その演奏に聴き入り影響を受けてより良くなっていきます。
この物語は悪人というべき人物が一人として出てきません。
受ける印象の違いは有っても、4人の主役はもちろん他の登場人物も皆良き人達です。
それでいて、コンクールが予備予選・一次予選・二次予選と本選へ進んで行くことが、読んでいてとてもスリリングでワクワクさせられます。
とても面白く、楽しい本ですが。正直いうとこんなにも疲れるお話も久しぶりです。
一人ひとりのコンテスタントが演奏を終える度に、その想いに演奏に心を奪われどっと疲れるのです。
こなにも面白くて、疲れた本はほんとうに久しぶりでした。
音楽は如何にして生まれたのでしょうか?
古来から人は神を称え太鼓を叩き歌い踊りました。
人を楽しませる為に、声をあげ弓を鳴らしました。
その音楽は人類と共に進化して、魅力的な旋律を得、より複雑な楽器を産み、その究極の楽器の一つがピアノだと思います。
ピアノというのは不思議な楽器だと思います。
鍵盤楽器かつ弦楽器であり、打楽器でもあります。
幼い子供でも鍵盤を叩けば音が出ます。素人でも少し学べばメロディーを鳴らす事ができます。
他の多くの楽器はまともな音を出すことだけでも技術がいるのが普通です。
ピアニストが弾くことで聴くひとにを泣かせる事も出来ますし、壮大な景色を想い浮かべさせる事も出来ます。
たった一人のピアニストがオーケストラと互角に渡り合う事も出来るのです。
著者はお父様の影響から音楽への造詣が深く、なかでもご自身でも学んだピアノが一番のお気に入りだそうです。
恐らくコンクールも良く聞いていらっしゃるのでしょう。
冒頭でコンクールの課題や、コンテスタントの演奏曲が載っているなど、本の構成自体がまるでコンテストのプログラムを見るようで楽しく感じます。
また、演奏される曲もいかにもコンテスト向きで難曲もあれば、思わず口ずさみたくなる
サティーの「ジュ・トゥ・ヴー」までと実に愉しい構成になっています。
各章のタイトルに挙げられている音楽用語・クラシック・ジャズ・童謡まで含むタイトルも思わずメロディーを口ずさみたくなります。
思えば、音楽家(ミュージシャン)というのは大変な仕事だと思います。
東京芸大・ジュリアード音楽院・コンセルヴァトアール等の各国のトップクラスの学校をトップクラスの成績で出たとしても、必ずしもプロになれるわけではありません。
ピアノやヴァイオリンなどの楽器は、まだ多くの生徒が望めますから、教師という道がありますが、弦や管などの楽器はオケに入るにしても、中々空きは無く競争相手も多いのが現実です。
それでも多くの人達が、プロを目指してミュージシャンの道を目指します。
ミューズの恩寵を得られるのはほんの一握りです。
しかし、その恩寵は演奏家にとっても、聴き手にとっても、限りなく大きいのです。
*いやぁ こんなに感想を書くのに苦労したのは、始めてかもしれません。
読み終わってから書き始めるまで、丸四日もかかりました。
正直書くのを止めてしまおうか?とも思いました。
「それだけ考えてこの程度の書評かい?」と言われても仕方ありませんが、
あえて書いてみました。
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