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30年前に出版され、文庫本になってから、87版を重ねた「ベストオブベスト(国内編)」をふとしたきっかけで手にしました。久しぶりに読んだ長編小説の面白さはどこにあるのか、コロナ禍時代の副産物です。

火車
つれあいにつきあって、FM東京の「メロディアス・ライブラリー」を2回にわたって聞いたのが、きっかけで、この本を読みました。東京生まれの筆者らしい日常生活の描写とはうらはらに、深刻な事件を追跡し、遂に解決できたと思いのほか、真犯人は、結局分からずじまいになる結末まで、面白く読みました。

番組のパーソナリティである、小川洋子は、「ラストシーンでありながら始まりでもあり、こんなラストを書く宮部みゆきさんは凄い」といい、作家仲間をも唸らせるこの小説は、やはり時代を超えたミステリーの名作です、と書いています。

題材になっているのは、クレジット・サラ金利用者の多重債務で、今なお、社会的な問題として解決していない問題です。フィクションの世界とは知りながら、あたかもドキュメンタリーのような気分で読ませるのは、筆者の力量であるとともに、誰もが引っ掛かりやすい陥穽だからだと思います。

クレジットカードが社会の中に定着し、コロナ禍の下で、キャッシュレス時代の必須ツールとして、もてはやされている現実を見ると、若者と高齢者を対象に、もっとその使い方と危うさを、きちんと教えていないのは、どこの責任なのかを考えさせるとともに、この本が、そのテキストになりうることを見出しました。

経済小説でありながら、推理小説としてヒロインの運命の過酷さに共感することとともに、そのような環境を作り上げている現代社会の一面を見事に切り取っているこの作品は、力作であり、傑作であると思います。



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  • 掲載日:2022/05/09
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