今、評判になっている『三体』をようやく読みました。
いや、『三体』の事はその一部を短編化した『円』という作品が
『折りたたみ北京』に収録されており、それを読んだ時から知っていて、『三体』自体の日本語版が出たら是非読んでみたいと思っていたのです。
ところが、実際に日本語版が出た時、手を出すのをためらってしまい、しばらく放置してしまったのです。
え? それは何故かって?
それは、『三体』は全三部作の第一部に過ぎないということを知ったから。
私、『全〇冊』みたいな本は、全冊揃えてから読みたい人なんです(なので、プルーストの『失われた時を求めて』も、読了できるかどうか自信も無かったのに、一気に全13冊を買い揃えてから読み始めた奴なんです)。
「それなら三部作全部が刊行されてから読んでもいいかな」などと間抜けな事を考えてしまい、しばらく読まずにいたのです(あー、自分のバカ、バカ!)。
とは言っても、やはり気になる物は気になります。
「図書館にあったら借りてみようかな~」なんて考えて検索かけたけれど置いていない(駄目ですよ、これをちゃんと購入しなきゃ!)。
そのうち、もう辛抱たまらん状態になり、「え~い!読んでしまえ!」と舞い上がり、通販サイトでポチってしまったのです。
で、この度ようやく読んだというわけなのですが、読み始めたら面白いのなんのって。
もう、一気読み、徹夜ですよ。
あー、もっと早く読めば良かった。
私と同じように、手を出すのをためらっているあなた!
待っている意味などこれっぽっちもありませんぜ!
さあ、今すぐ入手して読み始めるのだ!
というわけで、読了直後の興奮醒めやらぬままのレビューになっておりますが、とにかくとてつもなく面白かったんですよ。
物語はなんと、文化大革命のシーンから始まります。
文革で高名な物理学者の父を私刑にされた娘の葉文潔(イエ・ウェンジェ)は、自身も反革命分子のレッテルを貼られ拘禁されてしまいます。
文潔は、この世の中に、人類に絶望してしまうのです。
「こんな世界で生きていって何になる」という捨て鉢な気持ちになり、死を覚悟した時、彼女の論文(彼女も天体物理学者なのです)に目を付けた中国政府のあるプロジェクトのメンバーによって救出され、僻地に建設されていた巨大パラボラアンテナを有する紅岸基地と呼ばれる謎の施設に連れてこられます。
「ここでの研究に力を貸して欲しい」と頼まれるのですが、紅岸基地は高度の機密施設であったため、協力するということは紅岸基地から二度と出られないということを意味していました。
もはやあんな人々が暮らす世界になど戻りたくないと考えていた文潔は、一も二も無くこの申し出を受け入れ、この施設での研究に携わることにしたのです。
一方、それから40数年経った世界では、おかしなことが起きていました。
中国の一流の科学者たちが次々と自殺し始めていたのです。
どうやらその背後には『科学フロンティア』という、科学者たちの任意団体が関与していることが疑われました。
ナノ・マテリアルの研究をしていた汪淼(ワン・ミャオ)も『科学フロンティア』への入会を誘われていたのですが興味も時間も無いと言って断っていました。
これに目をつけたのが、この事態を捜査している軍、警察でした(そこにはCIAやNATOまでもが関与しているのです)。
汪は、売り言葉に買い言葉的なノリで『科学フロンティア』への入会と情報収集を承諾してしまうのです。
その後、汪の身にもとてつもないことが起き始めます。
まず、趣味のカメラで撮影したフィルムに謎の数字が写り込むようになります。
どうやらこの数字は何かのカウント・ダウンのようなのです。
その後、カメラを通さずとも肉眼でもこのカウント・ダウンが見えるようになり、しまいには通常何の変化も見せないはずの宇宙マイクロ波背景放射までが瞬いてモールス信号を打電し始めるのです。
モールス信号も、カウント・ダウンを続行しているのですよ。
そして、何者かにより、お前のナノ・マテリアルの研究をやめろと脅迫されることになります。
やめずにカウント・ダウンが0になると俺も自殺することになるのか?
汪は、その過程で『三体』というネットゲームを発見し、自らもアクセスしてみることにします。
これは、一種の文明シミュレーションゲームであり、非常に不思議な世界が描かれるのですが、その世界はいつも天体異変により滅亡してしまうのです。
その世界の謎を解き、滅亡を回避することがどうやら『三体』というゲームの目的のようなのですが……。
さて、いよいよ出て来た『三体』という言葉ですが、これは天文の『三体問題』に由来します。
三つの天体の動きを完全に解析することはできるか?というあの問題ですね。
ゲームの『三体』の世界にも、どうやら三つの太陽があるようなのです。
そのために、この世界は穏やかな『恒紀』という時期と、灼熱あるいは極寒になってしまう『乱紀』という時期がランダムに入れ替わるため、『乱紀』に生命が絶滅してしまうい、再度生命の進化が始まっても文明が十分に進化する前に滅亡することが繰り返されるのです。
どうやら三体問題を解明しなければならないらしい……ということが分かってきます。
そして、実はこの『三体』の世界は実在するということも分かってくるのです。
ところがですね、三体問題には解は無いのです。
ということは、三体の世界に住む生命体は、滅亡と復興を繰り返さざるを得ない過酷な運命にあるということになります。
いや、それだけではなく、三体世界には、天体の動きから完全なる壊滅が待ち受けているということも判明します。
何とか『乱紀』もしのぎ、高度な文明を築くまでに至っている現在の三体世界は、この完全な壊滅を避けるため、他の惑星への移住を決意するに至ります。
そのために、既に生命体がある程度の進化を遂げている惑星を探すことにし、宇宙からのメッセージを探し続けていたのでした。
そのメッセージを放ったのが、紅岸基地でした。
そう、紅岸基地は、SETI(地球外生命探索)のための極秘プロジェクト施設だったのです(他国に抜け駆けして異星人とのコンタクトを成功させて有利な地位を得ようというわけです)。
数年後、文潔は遂に三体世界からのメッセージを受信します。
しかし、そのメッセージは、何と、「このメッセージに返信するな。返信すると滅亡する。」という警告のメッセージでした。
このメッセージを受信した文潔が何をしたかというと……
おっと、粗筋のご紹介はこの辺りまでにしておきましょうか。
とにかくこの後もめまいがするような壮大な物語が続いていくのですよ。
『円』に描かれた、膨大な数の人によるコンピュータシステムも、『三体』ゲームの中で語られます。
とにかく一気読み必至の徹夜本であり、たとえ第一部だけであっても今すぐに読む価値十分の傑作です。
いや、こんな凄いSFが出てくるとは、完全に参りました!
読了時間メーター
■■■ 普通(1~2日あれば読める)
三体Ⅱ 黒暗森林(上)
三体Ⅱ 黒暗森林(下)
三体Ⅲ 死神永生(上)
三体Ⅲ 死神永生(下)
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