一部読者、いや作家の中でも評価が高い久生十蘭。
私ほとんど読んでいないんですよねぇ。もちろん、名前は知っていましたが、私が生まれる前の世代の作家さんであり、ミステリを書いているのは承知していましたが、何故かこれまで手を出さずにいました。
そろそろしっかり読んでみるのも良いのではないか? と思い、その短編集を図書館から借りてみました。
なるほど、こういう作品なのか……。
収録作品を何作か簡単にご紹介しましょう。
○ 黄泉から
かつて自分を愛した女性が戦争で亡くなっています。街でかつての恩師に偶然出会い、恩師が戦死した弟子たちを参りに墓に行くという話を聞き、その女性のことを思い出し、自宅で一人で弔いをしていたところ……。
○ 予言
新婚の主人公は、その恨みを買ってしまったと思われる知人から事細かな予言を渡されます。それは新婚旅行中に起きるであろうこと書いたもので、最後には主人公は人を殺した上で自殺すると書かれているのです。
その予言が悉く当たっていきます。俺は最後には自殺するのか?
最後にちょっとしたヒネりがあります。
○ 無月物語
暴虐の限りを尽くした藤原泰文。その悪行に耐えられなくなった妻と娘はついに泰文を殺そうと決意するのですが……。
○ 黒い手帳
主人公が住むアパートの別の階で一人暮らしをしている奇妙な男は、遂にルーレットの出目の法則を解明したと豪語します。
一方、また別の階に住む日本人夫婦は、後援者が破産してしまったため、仕送りが途絶え、手持ち金もなく、このままでは異国で客死するしかないという状況に追い込まれています。
一人暮らしの男がルーレットの秘密を解明したと聞きつけ、何とかその法則を我が物にしようとするのですが、男からは「ルーレットに法則などない!」とはねつけられてしまいます。この上は……。
○ 母子像
非行を繰り返す男子中学生。その担任が警察に呼ばれます。
警察としてはさほど大した非行でもないので穏便に済ませてやろうと考えているのですが、肝心の男子中学生が何もしゃべらないので扱いに困り担任を呼んだというわけです。
心に思うところがあった担任は、その男子と面会するのですが……。
と、こんな感じの作品で、確かに私が好むような作風でもあり、魅力も感じたのですが、一方ではかなりスノッブな雰囲気も強く感じました。
当時は相当おしゃれだったんでしょうね。
ペダンティックな風味もあり、これは好きな人はハマりそうでもあります。
そうですねぇ。中井英夫とかが好きならそのラインには並びそう。
もっと夢中になって読んでも良さそうなのですが、なぜか今ひとつ踏み込めないのはどうしてだろう?
焦らず、少しずつ読んでみることにしましょうかね。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)/421ページ:2026/03/09
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