韓国の女性たちは、様々な差別を受けてきました。生まれたときから男ではないということで軽く扱われ、上の学校へ行くことも許されず、とにかく嫁に行け、そこにしか生きる道はないと教えられてきました。夫が真面目に働いていてくれれば、まだいいほうでした。戦争で死んでしまったり、失業したり、アルコール中毒になったり、暴力をふるったりする男が大勢いました。おのずと、家族を養っていくのは女の仕事になっていました。そこから逃げることは許されなかったのですから。
家族とともに外国へ移り住んだ女性も大勢いました。そこで韓国コミュニティを作り生きてきました。でも、祖国へ帰りたいという気持ちを忘れたことはありませんでした。
この9篇が収められています。
・私たちは私たちの味方となって
・父親になっておやり
・半分の半分の半分
・雲丹(うに)
・ミョンジャさんに似て
・私のやさしい乳首
・春の夜
・他の顔
・禁煙キャンプ
一番好きだったのが「禁煙キャンプ」です。登場人物たちは、家族から頑固な人としか見られていないようだけど、そうなったのには理由があったのです。長年の喫煙は、ずっと耐え続けて来た苦しい生活の、せめてもの慰めだったと気がつく人たちが描かれています。口が悪いのも、逆にしゃべりたがらないのも、耐えていたからこそなのだと思うと、こういう人たちのおかげで今の世の中があるのだと思えてくるのです。
この小説集の中で、何度か登場して最も目立つ存在は、キ・ギョルヒンさんとミョンジャさんの二人の女性だ。それぞれ作家の祖母と母の実名だという。
~中略~
ミョンジャという名を漢字で表記すると「明子」となる。韓国では1940年代から1960年代にかけて、日本植民統治の名残りから女性の名前に日本式の「子」が付けられることが多かった。「順子 スンジャ」「慶子 キョンジャ」「英子 ヨンジャ」「美子 ミジャ」なども、当時の典型的な女性の名前である。(訳者あとがき より)
つまり、名前だけでその人がどの時代に生まれた人なのかがわかるのです。祖母の時代の名前は韓国の名前なのに、母の時代は日本の影響を受けた名前だから。
男尊女卑が当たり前の世界にいると、しょうがないという諦めの気持ちしか生まれないのですが、その構造が分かってくると、考え方が変わってきます。親は「結婚して養ってもらえばいいんだ」と言うけれど、周りを見回してみれば、養ってくれない男が大勢いるということもわかります。だったら、自分で自分を養っていくしかない。
現在、世界一の少子化が進む韓国。女性を大事にしてこなかった、これまでの歴史がそうさせているのでしょう。でも、これは対岸の火事ではありません。日本だって同じなのですから。
#半分の半分の半分 #NetGalleyJP
この書評へのコメント