日本で一番古い旅行代理店はどこでしょうか?
JTB? とか思ったりしますが、実はJTBが設立される七年前に日本旅行(旧名は日本旅行会)が設立されているんだそうです。
世界で一番古い旅行代理店はトーマス・クック社なのだそうですが、同社は2019年に倒産し、その後は中国の投資会社がこの商標を取得してしまったそうなんです。そうなるとなんと日本旅行が現存する世界最古の旅行代理店ということになるのだそうです。
本書は、日本旅行(会)を創立した南新助を中心に、同社に関わった人々や同社の発展の歴史を描いた一冊であります。
そもそも日本旅行会は近江国の草津駅で営業された弁当屋から始まったそうなのですよ。
草津駅の当初予定地で住民の反対運動が起き、駅建設が滞った際に、新助の父親が、自分の地所を提供して駅を作らせたため、国鉄が駅での専売を認可したのがそもそもの始まりだったそうです。
その後、新助もこの弁当屋の仕事に携わるようになるのですが、あるとき、近所の住民達からお伊勢さん参りがしたいと相談され、希望者を引率して伊勢参りをしたことが旅行業に関わるきっかけだったようです。
当時は旅行など滅多なことではできず、行くのなら神社仏閣のお参りをしたいというのが人々のニーズだったようなのです。
これをきっかけとして、希望者を神社仏閣のお参りツアーに連れて行くことが続き、いっそのことこれを家業にしたいと新助が希望したことから日本旅行会が生まれたのだとか。
当時は旅行代理店などという言葉は無く、人々からは「旅行屋さん」と呼ばれていたのだとか。
いやあ、様々な出来事があり、(大津事件にまつわるエピソードなどもあるのですよ)、戦時中の苦しい時代のことも描かれます。
結構、著名人の名前も出てくるのですが、そうか、このようにして日本旅行は発展していったんだと大変興味深く読みました。
とは言え……。実は日本旅行の社史って特に創業時代のことはあまり書かれていないんですって。当初、著者はこれに頭を悩ませ、なかなか本書が書けなかったそうなのですが、それでも様々な人からの聞き取りや断片的な情報を組み合わせ、どうしても分からないところは創作して書き上げたのが本書ということなんです。
ですから、一見ノンフィクションか? とも思われるのですが、創作部分がそれなりに含まれている「小説」なのだと著者は言います。
それにしても当時のことが活き活きと描かれており、小説として読んでも大変面白かったのです。
良い話系のエピソードも多々あり、読んでいて気持ちの良い作品でもありました。
なかなかのお勧めであります。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)/277ページ:2026/03/20
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