681 大沢在昌 「黒石 新宿鮫Ⅻ」
鮫島は相変わらず健在、と言いたいところだが、
歳をとって、生真面目さが目立ってきた気がする。
いや、時代の方が変わっただけで、鮫島は何も変わっていないのかも。
新宿鮫Ⅰが1991年だから、35年で12巻目。
毒猿、屍蘭、無間人形、炎蛹、氷舞、灰夜、風化水脈、狼花、絆回廊、暗躍領域。
(並べてみるとSFのタイトルみたい)
過去に鮫島が関わった、中国系マフィアに関連する「新しいアメーバ組織、金石」に
鮫島たちが近づいていくのが大筋。
金石のリーダー格の八人は八石と呼ばれているが、各々を知らない者も居る。
徐福、雲師、安期先生、鉄、扇子、左慈、公園、虎
(3つは中国で仙人の名前と)
八石の一人である徐福が「組織を変えていきましょう」と唱え、
それに従わない者を消し始めていく。
徐福が飼っている殺し屋「黒石」が実行していると噂される。
鮫島なりの「王道」で、徐福と黒石に鮫島が迫っていく。
警視庁の公安所属で、金石を追う矢崎が新宿署に派遣されて、エッセンスを加えている。
矢崎は公安のスパイとして、新宿署に送り込まれて、鮫島らの内偵をしていた過去がある。
鮫島の身代わりとなって殉職した桃井課長(通称:饅頭)の後任である、女性の阿坂課長は、
徐々に鮫島のしっかりとした後ろ盾になってきている。
彼女と鮫島のロマンスを、かつて期待したが、その線はなさそうだ(いや、無いとは言い切れないぞ)
本著でいつもよりグィッと前に一歩出てきたのが、鑑識の藪。
藪の推測からの状況証拠固めの手腕が冴えている。
また、藪が新宿署からの異動を頑なに断っている理由も、ぼんやりと見えた(ある程度は分かっていたが)。
コンビを組むことになった矢崎が若い分、鮫島の言葉がちょっと生真面目に聞こえてしまう。
一方、矢崎に「かつての鮫島の姿」が、垣間見えた気がした。
少しラストが性急に感じられた点、
徐福の動機に強いものが感じられなかった点、
鮫島の捜査の王道は、最早ある程度予測がついてしまう点、
など気になるところはあれど、
鮫島たちが健在なら、もうそれで良い。
オールドファンになってしまったようだから。
(2026/2/8)
PS 調べたら「鮫島の貌: 新宿鮫短編集」が2015年に出ていると、、、
しかも、、、両津勘吉や、冴羽リョウとの共演まであると、、、
これは、、、読むべきなのだろうか、、、
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