猛毒生物といえば陸上ではヘビやカエル、海ではフグを真っ先に思い浮かべる。
本を開いて最初のカラー写真ではオレンジと黒の縞々のオオムカデが出てきて、さらに白い鱗に紫の口腔と黒い牙といういかにも毒蛇なブラックマンバが出てきます。
カラー写真が結構豊富で、白いページにその生物が浮き出すかのような構成で読んでいて手を引っ込めたくなるほどだった。
ヘビはいいけど昆虫も多いのが難点です。
まずは毒を意味する用語の整理から始まる。
有毒動物自身の毒腺で生成・貯蔵され、別の動物に積極的に注入されるのが「venom」。
食物連鎖によって獲得され、別の動物に受動的に取り込まれる毒物や人工的に作られた毒物の総称が「poison」だ。
そして有毒動物の毒は捕食のように能動的に使われる場合と、防御のように受動的に用いられる場合に大別される。
またベノムはペプチドとタンパク質からなるのに対し、ポイズンはアルカロイドやペプチドとタンパク質以外の有機化合物からなっている。
毒の種類も様々なら毒の注入方法も様々に存在するが、ブルーノイシアタマガエルというカエルは皮膚線で毒液を分泌し、頭突きをして頭蓋骨の骨突起が皮膚を貫通して相手に毒液を送り込むという面白い手段を持つものもいる。
そして毒の使い方も捕食や防御だけでなく、クサリヘビのように襲った獲物を追跡するための毒や、獲物に毒を注入してその中に含まれる酵素で液状化して食べるサシガメの毒、トガリネズミのように獲物を麻痺させて貯蔵するための保存剤のような毒、幼虫に理想的な飼育環境を作るためにマツを弱らせて幼虫の餌となる共生菌を繁殖させるための毒まである。
サソリやムカデのように生殖に毒を使うものまでいるというから驚きだ。
有毒生物を研究する研究者の話も出てきますが、コーネル大学の大学院生だったマイケル・スミスはミツバチに刺されたときに最も痛い場所はどこかという研究をしてイグ・ノーベル賞をとったそうです。
もちろん被験体は自分自身ですが、一番刺されて最悪な場所は鼻孔、上唇、陰茎体の順で痛みレベルは9.0、8.7、7.3と評価している。
研究中によくアナフィラキシーを起こさなかったものだ。
アマガサヘビに咬まれて亡くなった研究者の話や、ホプロケファルス・ステフェンシイというヘビに咬まれて血液凝固能力を破壊され目や肛門に至るまで出血した研究者の話も出てきます。
また蛇に咬まれて組織壊死した足の写真も出てきたりとなかなか覚悟のいる本でもある。
君子でなくとも危うきには近寄らず、有毒生物からは離れて生活していたいと思いました。
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