ガブリエル・ガルシア=マルケスの代表作。
原著初版は1967年、邦訳は72年。日本では当初、さほど売れなかったという。
その後、長らく文庫化されず、文庫が出たら世界が滅びる(!)とまで言われていたらしい。どうせなら100年待ったらよかったのに、という気がしないでもないが、52年経った2024年、著者没後10年にその文庫が出た。出版社の売り出し方もうまかったのだろう。これが爆発的に売れた。
そんな文庫版をブームが落ち着いた今頃、読んでみた。娘についていった万博で、コロンビア館に入り(おそらくたまたま空いていたのだと思う)、その際にガルシア=マルケスが使用したタイプライターを見たことも何となく記憶にあった。文庫化から2年経ったとはいえ、図書館の待ち列はまだそれなりに長く、購入することにした。
帯の文字が振るっている。傍点付きで「この世界が滅びる前にーーー」。
単行本の時に(多分、学生時代)一度、読んでいる。
いろいろあったけれど、何だか最後にすべてが流されてゆく、というごく漠然とした記憶しかない。
再読しても印象は似たり寄ったりで、結局のところ、これはそういう物語なのかもしれない。訳者あとがきにもある通り「要約などは徒労としか思えない無数の挿話がからんでいる」のだ。
ホセ・アルカディオ・ブエンディアとウルスラ・イグアラン夫妻が、故郷を出て、蜃気楼の町マコンドを作り上げ、一族をなし、けれどもついにはそのすべてが崩れ去るまでの物語。それが微に入り細にわたり語られていく。
改行もなく長い文章が続き、気が付くと1つの挿話が終わっていてまた次の挿話になっている。時にはラテンアメリカ的なマジックリアリズムももちろんあり、全体として、何だか昔話や神話を聞いている感じもしてくる。
一気に読み切るというよりは、少しずつ読み進めるのに向いているのかもしれない。
マジックリアリズム的な挿話には、繰り返し現れる幽霊の話、ある人物が死んだ後、通りを流れ出て母親の足元に流れ着く話、美しい小町娘が昇天する話、降り続く雨、その後の日照りの話などがある。
それらも印象的ではあるのだが、成就しない愛に何だか胸を突かれる。
1人の男に2人の娘。男は1人を選び、もう1人はそれを呪う。しかし、結局選ばれた娘は別の男に走り、残った男はもう1人の娘を選びなおし、一時は2人はうまくいきそうだったのに、最後の最後で娘が拒絶し、男は絶望して自殺する。娘はその後もいくどか恋(あるいは火遊び)をするが、いずれも実らない。
また別の話。幼くして見初められた少女。初潮を経て、まもなく結婚式となる。老人の世話をしたり、一族の赤ん坊を自身の子のように育てたりと甲斐甲斐しく働いていたが、双子を宿したまま、あっけなく病死する。
革命に身を投じつつ、結局は戦闘に疲弊していくものもいる。
それぞれの孤独、それぞれの絶望。
そして最終的に、一族は蜃気楼のように消え去っていくのだ。
百年の孤独(Cien Años de Soledad)。
それはある一族の物語であると同時に、結局のところ、我々皆の物語なのかもしれない。
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