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※ネタバレ注意!

世界とは、いつもなんという至上の音楽に満たされているのだろう――。芳ヶ江国際ピアノコンクールに参加する、4人のピアニスト。巡り合い、響き合い、競い合う中で、彼らは何を手にするのだろうか。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • 蜜蜂と遠雷
  • by
  • 出版社:幻冬舎
蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷、タイトルだけではどんな内容だか見当もつかない。

カバーのあらすじを見ると、ほう、ピアノコンクールの話らしい。
……最近、ピアノというか音楽をテーマにした作品が多くないか?
しかし、なぜ「蜜蜂と遠雷」なのだろうか……?

そう思いつつ読み始めたが、いや、面白かった。
一息に読んで、疲れはあるが不快ではない。

心地よい読了感。
分厚いハードカバーであることを忘れてしまう。
それほどに読みやすく、次へ次へとページをめくってしまった。


この物語は、4人のピアニストによる群像劇だ。

長らくピアノを弾けなかった、元プロの少女。
妻子を持ち、楽器店勤務をするサラリーマン。
完璧な技術と抜群の音楽性を誇る、優勝候補の少年。
世界を放浪する、自身のピアノすら持たない、『災厄』であり『ギフト』たる少年。

彼らが参加する芳ヶ江国際ピアノコンクールでの
出会いや音楽、成長、変化――を、
1次予選から3次予選、本選を通して多彩な描写で描かれる。

ピアノコンクールの話であるから、音楽は非常に豊かに描写されている。
「強者」を登場させる上で、大変なのがいかに彼らが「そうであるか」を描くかだ。

この物語はそれが非常にうまい。
彼らメインの登場人物以外にも多くのピアニストが出てくる。
当然、彼らもコンクールに出場するくらいには「うまい」。

その人々をうまく負けさせつつ、メインを持ち上げていく必要がある。
できるだけ多くの人が納得できるかたちで。

天才が一人だけなら、その人だけをひたすら持ち上げていればいいが、
今回のように複数出てくるときは大変だ。
しかも別々の技術や美しさ、素晴らしさを表現しなければならないのだから、なおのことだ。
それが非常に丁寧に美しい。
最終的に誰が優勝してもおかしくない、誰も当て馬に見えない。


また性格も非常に魅力的だ。
超越した「天才」の面だけでなく、普通の人としての面も話の中できちんと描かれている。
だからかどれだけコンクールで超人的な演奏をしても、
完全にリアリティを損なうことがない。

さらに、本筋の登場人物以外もそっと表現されている。
そういった表現のおかげで、世界が非常に広がって見えた。

そこがこの話の魅力をさらに引き立てているように思う。


一方で、3次予選まできっちりと書かれているため、
曲に対する描写が驚くほど濃い。がっつりだ。

絶品の料理を延々と口に放り込んでくる、狂った料理人のようだ。
実際においしいのでどんどん食べたくなるが、
お腹はぱんぱんだし、ずっしりともたれる。


あと個人的な問題なのだが、クラシックを知らないため
実際にどんな流れなのか想像できないのが大変だった。

だいたい音楽関係の本を読むと、読んだ後や最中にその曲を聴くのだが、
今回はそれぞれ登場人物がオリジナルに「組み合わせている」ため、
ただその曲を聴いただけではそれがどんな風なのかわからないのが悔しい。

またオリジナルの曲もあるため、そこはどうやったも想像するしかないのが辛い。
もっとクラシックに明るければ、わかるのかもしれないが……。


しかしこれらは魅力と表裏一体だ。
そういう意味で、繰り返し読めるものだと思う。
この作者の、ほかの小説も読みたくなった。
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  • 掲載日:2017/10/20
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この書評へのコメント

  1. oldman2017-10-20 14:28

    ウーン 上手いなぁ…読みたくなった……というか、「積んでないで読めよ!」って事だな。

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