本が好き!ロゴ

閉じる

絵画の見方は色々あるということなのでしょうね

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
  • なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険
  • by
  • 出版社:白水社
なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険
 本書は、世界的に著名な美術史家である著者が、割とくだけた口調で6つの絵画(ただし、そのうちの一つは特定の絵画ではなく、マグダラのマリアが描かれているいくつかの絵画を取り上げます)を題材として、その絵画の意味、見方について語るという趣向の本であります。

 「くだけた口調」と書きましたが、世に多くある美術本の解説等とは異なり、時に別の美術史家に宛てた手紙の体裁を取ってその解釈に異を唱えたり、あるいは一人二役となり、立場を異にする美術史家同士の論争という形を取る等(個人的には結構辛辣な口調にもなっていると感じましたが)しながら絵画の見方を論じていくという構成になっています。

 例えば、第二項で取り上げるフランチェスコ・デル・コッサの『受胎告知』では、画面にカタツムリが描かれていることに着目します。
 画家は何故カタツムリなど描いたのか? 項中で論争する相手の図像学者は、そのカタツムリが象徴する意味を主張するのですが、著者はこれに反対する立場で、別の観点からカタツムリの意味を説き起こしていくといった具合です。

 絵画の中の結構細かいところに着目した議論が行われるのですが、残念ながら本書中に掲載されているお題となっている絵の写真がよろしくないのです。
 モノクロだし、全般的に画面が暗く、著者が指摘する部分が見えにくいんですよね~。それでも旧版よりは鮮明な写真に差し替えたということなんですが、このような議論の参照とするにはこの版の画像でも不鮮明と言わざるを得ません。
 ここはもっと鮮明なカラー写真を使用して欲しかった。

 取り上げている絵画作品はルネサンス期の宗教画が多く、私が知っている絵画はほとんど無かったのですが、唯一(ルネサンス期の宗教画ではないのですが)最後に取り上げているベラスケスの『ラス・メニーナス』のみが知っている絵画でした。

 この作品に関してはこれまで数多くの論考や分析がなされているのですが、著者はそういう作品だからもうこれ以上この絵について考察する必要などないじゃないかと皮肉な主張で始めるものの、結局は持論を展開するという形になっています。

 著者は画中の細部に着目するのが常套的な絵画解釈の手法なのだそうですが、時にかなりセクシャルな解釈が多くなるところもあり、そんなものですかねぇと読ませていただきました。
 私たちは絵画を見ているようで、実は肝心なところは何も見ていないんだよと言われているようでありますが、まあ、絵画の見方というものには様々な立場があり、自分が納得する見方をすれば良いんじゃないかなとも感じました。
 絵画は自分の愉しみのために鑑賞するものですしね。


読了時間メーター
□□      楽勝(1日はかからない、概ね数時間でOK)/300ページ:2026/03/20
  • 本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
  • 掲載日:2026/04/23
投票する
投票するには、ログインしてください。

この書評の得票合計:13

参考になる:13票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

    No Image

    コメントするには、ログインしてください。

    なにも見ていない―名画をめぐる六つの冒険 の書評一覧

    取得中。。。