著者の作品は、芥川賞受賞作の
「ハンチバック」で知りました。芥川賞受賞の前は、二十年くらいラノベの投稿を続けていて、ずっと不採用だったそうです。一般文藝に応募したところ、デビュー作で芥川賞受賞という快挙を成し遂げた人です。どうしても著者の身体面のハンディキャップに目が言ってしまうのですが、書き手として優れた人が、たまたま障碍があったというほうが実情にあっているような気がします。
だから本作がデビュー二作目なんですよね。著者の年齢はともかく、若書きと言っていい出来栄えです。もうちょっと時間をかければよかったのにと、惜しい読後感がありました。出版不況だから、きっと待ってもらえないんでしょうね。
オフィーリア23号、女の子の背骨の中篇二本が収録されています。どちらも、語り手の視点があいまいな部分があり、登場人物の関係性がイメージしにくかったりする部分があります。ちょっと描写不足気味で、迷子になりかけます。たぶん見直しをすれば充分仕上がるものです。文章が魅力的ですし、取り上げるテーマもデビュー作とつながっていて著者の世界観が伝わりますから、そんな意味で惜しいと思いました。
世界観の切り口で考えると、オフィーリア23号は、女性という位置づけに対する強烈なコンプレックスの作品です。女の子の背骨は、身体面のハンディキャップを通して社会を見る作品です。デビュー作には両方含まれていました。本作の読了後、自分がどちらの面で著者に惹かれているのか、分からなくなりつつあります。
オフィーリア23号。フェミニズム、ミソジニーといった用語が使われ、女性の地位についての倒錯した思いが展開されています。オフィーリアとは、ミレイの絵で有名な、ハムレットの一場面で小川を流れていくあの人のことです。
主人公は女性です。男性優位の家庭に育ち、暴力的なほど女性蔑視の環境で生きてきた人です。女性の思考の過程で、ある思想家の書がひんぱんに引用されます。徹底的に女性を差別している書という代物なのですが、主人公は舐めるようにこだわり続けています。その結果、精神と肉体を切り離すような行動に出ます。
残念ながら、こんな女性はさすがに極端すぎるだろうと引いてしまいました。自分の身体をモノ扱いしていて、ひどい言いかたですがおもちゃ扱いとすら評していいレベルです。
著者の特殊性を考えると、それも著者の特徴なんですよね。著者は、きれいにひらひらしている女性を見て、性産業の世界と頭のなかで結び付けて見ている気がします。女性の特徴として、中身で勝負することと、外見で勝負することを、対立軸のように捉えているふしがあります。それは、著者ができないことゆえのコンプレックスかもしれないと思ってしまうのですが、その発想こそが差別だと言われかねなくて怖いですが。
なんとも評価が悩ましい一冊です。万人向けではないですね。


- 掲載日:2025/12/13
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