長く絶版入手不可の状態が続いていたキャサリン・ダン「異形の愛」が、2017年5月に河出書房新社から復刊される。
「異形の愛」は、《フリークス=障がい者》 を題材にした作品である。タイトルにある「異形」は、フリークスを指している。
見世物サーカス団を率いる夫婦は、妊娠中に毒物を服用して中毒を起こすなど、涙ぐましい努力を重ねて我が子を《フリークス》に仕立てる。長男のアーティは両手足の欠損した“アザラシ少年”、エリーとイフィーの姉妹はシャム双子として生まれた。語り部でもあるオリーはせむしでアルビノ、弟のチックは見た目はノーマルだが超能力の持ち主だ。物語はこの家族の複雑な愛憎を描き上げていく。
フリークスという世間一般にはタブーな存在を物語の中核に据え、フリークス同士の葛藤や愛憎、嫉妬や競争心が巧みにストーリーとして展開される。必ずしもフリークスを登場人物にする必要はないかもしれないが、フリークスであることで、この作品が「ありふれた家族愛を描く作品」という枠組みを超越したのだ思う。
ただの「キワモノ小説」ではない。読み進めていくうちに登場人物たちがフリークスであることを忘れ、彼らの愛憎や悲哀の物語にいつしかどっぷりと浸かっている。アーティ、エリー、イフィー、オリー、チックたち登場人物のそれぞれに、いつしか自分を当てはめ、感情移入してしまう。彼らは、私たちの真実の姿を映し出す鏡のような存在なのだ。彼らには身体の障害はあるが、それをハンディキャップとしない心の健全さを持っている。彼らの物語を読むときは、自らの心と身体を反転させてんでいくように読むことだ。彼らに自分を同化させて読み進めていくことで、物語世界にのめり込めば、ラストに待ち受ける感動も倍増するに違いない。
長く絶版状態が続いていたため、本書は読みたくても読めない本だった。私は、地元の図書館に蔵書があったので借りて読むことができたが、《フリークス=障がい者》を描くという特異性を考えると全国の図書館に蔵書がある類の本ではないだろう。
今回、河出書房新社から復刊されることで、多くの人にこの本を読んでもらえることが本当に嬉しい。本書は、紛れも無く家族小説の傑作であり、多くの人に読んで欲しい1冊である。
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