1888年、バルセロナ。
万博を控えている華やかなこの街で、若い女性が惨殺される連続殺人事件が起きます。
そのバルセロナに帰郷したのは、オックスフォード大学の教授、ダニエル。
父が死亡したとの電報を受け、バルセロナに帰郷したのです。
学長の愛弟子であり、若くして教授となり、
学長の娘との婚約も決まって順風満帆なダニエルですが、
実は7年前に、火事で婚約者と弟を亡くしており、そのままバルセルナを逃げるように去ってイギリスへ行き、父とはそれ以来疎遠になり、口もきいていませんでした。
父の葬儀の日、墓地に現れた男・・・
新聞記者のフレーシャが、ダニエルの父の葬儀に現れ、
「お父上は殺されたのではないか」
と言いだしたのです。
ダニエルの父、アマットは、バルセロネータ地区の労働災害を調べ、公衆衛生の向上に乗り出していたとのこと。
その結果、地域住民に感謝され信頼されるようになった父は、ある時、この地区で若い娘が次々とかどわかされ、何人も忽然と姿を消し、発見されたときには血を抜かれ、手足を切断されたりして無残な姿で発見されていることを住民から聞かされたのです。
父、アマットは警察も疑っており、あらたな調査をはじめ、行方不明になった娘たちの名前、年齢、遺体が発見された日付、遺体の状態をリストにして新聞記者に渡したのです。
そして、
もっと決定的な証拠がみつかるまで記事にしないようにとフレーシャに約束させ、
ついに捜していたものを見つけた、とフレーシャに連絡し、彼と待ち合わせしたのを最後に、不慮の事故で亡くなってしまった・・・
ダニエルに、父の荷物を調べてほしいと頼むフレーシャ。
バカらしい、早く婚約者の待つオックスフォードへ帰ろうとダニエルは思うのですが、何かが引っかかり、少しだけ調べてみようと思ったのが物語のはじまり・・・・
さらに、父、アマットの助手をしていた、秘密を抱える医学生、パウも加わって、連続惨殺事件の謎、父の死の謎を調べることになるのです。
物語は、若い娘の連続惨殺事件と、幻の医学解剖書を求めて、ダニエル、フレーシャ、パウの三人が危険な目に遭いながらも真相を突き止めようと奔走します。
万博を目前に控えて、盛り上がっている華やかな街、バルセロナですが、
下水道の中には恐ろしい貧民窟があったり、
経済成長の波に乗り、次々と工場ができたのはいいが、汚染された水による感染症の流行、劣悪な労働環境での労働災害などが多発したりと、
華やかさと、劣悪な衛生状態、労働環境、貧しさは、まるで表裏一体。
表と裏のあまりにも違う、それがこの当時のバルセロナという街なのですね。
そんな混沌とした状態のバルセロナで起きた連続惨殺事件。
7年前の火事で逃げるようにこのバルセロナからイギリスへ逃げたダニエルと、
賭博の借金が膨らんでいるだらしない新聞記者フレーシャ、謎の医学生パウは、最初は全くお互いの本心もわからない、互いに怪しみながら事件を調べ始めるのですが、だんだんと信頼関係ができ、友情が芽生え、恐ろしい謎を三人で解いていきます。
ミステリというよりは、SFチックな部分も多いですし、霊能者なんて出てきて、ちょっとホラー的な要素もあったり、ありとあらゆる要素がたくさんありすぎて、ちょっとまとまりに欠けるように思えなくもないのですが、
それでもハラハラドキドキしながら600頁ちょっとを読み進めさせてくれた、
とてもよくできたミステリ・・・どちらかというと冒険小説でありました。
真犯人はあっと驚く人物。
ダニエルが昔愛した人と、その夫との三角関係や、
医学生パウの苦悩の理由や、
ちゃらんぽらんに思えるフレーシャの男気など、楽しめる要素はてんこ盛り。
何より、
古いものと新しいものが混在する時代背景が良かったですねぇ。
映画なんかにしたらとても雰囲気が出てよさそう!
初めてのスペインミステリ、なかなか面白かったです。
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