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※ネタバレ注意!

「本が好き」のレヴューに魅かれて読んでみました。「もしもドラキュラが滅ぼされていなかったとしたら・・・」という立ち位置での本書は、さまざまな登場人物が入り乱れての一大活劇に仕上がっています。

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
ドラキュラ紀元一八八八
 紀元1888年。
 ヴァン・ヘルシングにやられることなくドラキュラ伯爵は生き延びていた。
 それもイギリス王国のなかに入り込んで。
 普通の人間である温血者(ウォーム)とヴァンパイアが闊歩するロンドンが舞台の本作。
 ヴァンパイアには新生者(ニューボーン)や長生者(エルダー)がおり、事態はなかなか社会情勢はなかなか複雑。
 しかも、強く恐怖のイメージが強いヴァンパイアばかりではなく、人間社会に同化したそれが登場。
 娼婦もいる始末。

 こんな社会情勢のロンドンで、大きな事件が発生する。
 通称“銀ナイフ”によるヴァンパイアの街娼殺害事件。
 それはのちに“切り裂きジャック(ジャック・ザ・リパー)”と名乗る殺人鬼の連続事件へと発展する。
 この事件解決に様々な思惑が絡み、様々な人物が登場する。
 政府の諜報機関であるディオゲネス・クラブに所属するボウルガード・チャールズ、ドラキュラ伯爵古都ヴラド・ツェペシより長命な長生者のデュドネ・ジュヌヴィエーヴを筆頭に、シャーロックとマイクロフトのホームズ兄弟(シャーロックは登場しているとは言えないような設定だが)、スコットランドヤードのレストレード、ドクターモローも登場すればジキル博士もいる。
 登場人物事典がおり込まれているが、知らぬ人ばかり。
 しかし、事典により本書オリジナルではない登場人物の多いことを知り、少々呆れてしまった。
 よくもまあ、変な手あかがついているような人物たちをうまく配置して、物語を紡ぎ出したものだ。
 
 本書は『ドラキュラ紀元』の改題になる。
 出版社が変わってしまったのだ。
 そのおかげで「著者による付記」や実現しなかったという映画のシナリオの一部、ドラキュラや切り裂きジャックに関するエッセイなど盛り込まれることに。
 アナザーエンディングとその注記は、著者キム・ニューマン自身の心変わりを示していて興味深い。
 この心変わりは、本書を楽しんだ今、大いに歓迎すべきものと言える。

 さて、物語は“切り裂きジャック”事件の探索が軸にある。
 しかし、ボウルガードとジュヌヴィエーヴの心の機微を描くことにも力を入れていく。
 諜報機関で活動するボウルガードはどこか達観したような雰囲気を持つ。
 そして、外見は16歳の美少女でも御年400超というジュヌヴィエーヴは、戦わせても手ごわい。
 そんな彼女を追い詰めた敵もいて、どうやらキョンシーのようだ。
 ボウルガードとジュヌヴィエーヴが惹かれあい、結ばれるのは自然の成り行きだったと思うが、おそらく、この関係性に力を注ぐあまり筆者の心はボウルガードに傾いてしまい、結果的にエンディングが改まったものと思う。
 そして、一読者としてもボウルガードへ心が傾いてしまった。
 実に歓迎すべき終結と言えよう。

 本書はまだキム・ニューマンのドラキュラ三部作の第一作目に過ぎない。
 役者のあとがきには、2巻、3巻と継続する旨が綴られている。
 楽しみは、まだまだ続くようだ。
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  • 掲載日:2019/01/07
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