主人公のシャツキは有名な検察官で、ルックスも良いことからマスコミ受けも良いのです。
今回、検察官見習いとして同じ検察局に配属された優秀だけれど堅物のファルクは、そんなシャツキの下で働きたいとの強い希望を提出し受け入れられます。
シャツキとしては、『弟子』など望まないのですが、上司の命令でもあり、仕方なくファルクを配下に置きました。
さて、そんなシャツキなのですが、家庭生活は少々複雑です。
前妻との間の高校生の娘ヘレナと暮らしているのですが、新たにゼニアという恋人ができ、3人で同居を始めたのです。
しかし、ヘレナはどうもゼニアとうまくいっていない様子なのです。
ヘレナはシャツキの再婚を望んでいないのか……。
そんなシャツキは、建設現場から発掘された人骨の検分というあまり面白くない仕事を割り振られました。
この物語はポーランド北部のオルシュティン市を舞台としているのですが、戦時中の骨が時々見つかることがあり、今回もそれだろうと思われます。
シャツキとしては、頭を悩ませるような難事件に当たらないかと期待しているんですけれど……。
現場は、病院に続くかつての防空壕の中でもありましたし、完全に白骨化した骨のように思われたので、やはり戦時中の死体だろうと考え、大学病院に骨を回送するように指示したのです。
これで一件落着と思っていたところ、骨を回送した大学病院の教授から連絡が入ります。
教授が調べたところ、足の指に特殊な手術痕があり、その手術をしている病院は一つしかないと言うのです。
そして記録によるとその手術を受けた患者も一人だけであり、手術を受けたのは何と1週間前だというではありませんか。
これは戦時中の死体などではない!
教授は、この死体は新しいもので、配水管の洗浄液などのアルカリ性の溶液で生きながら溶かされて白骨にされたものだというのです。
これは大事件です!
しかも、生きながら溶かされたなんていう猟奇的な事件でもあり、マスコミが飛びつくのは目に見えていました。
俄然やる気が出てきたシャツキなのです。
捜査にのめり込むシャツキのもとに、一人の女性が訪ねてきます。
これも仕事だということで、渋々応対したところ、その女性は夫が怖いのだと訴えます。
しかし、身体的、精神的に暴力をふるわれているなどということは一切ないとも言います。
それでは事件になりません。
シャツキは、そのような件は扱えないと言ってその女性を帰したのです。
その後、部下のファルクに何気なくその話をしたところ、ファルクは何故サポート・センターを紹介しなかったのかと怒り出します。
その女性は全てを語れなかっただけに違いない、典型的な虐待被害者の特徴だと主張し、何と、シャツキの対応を上司に報告すると言い出し、実際にシャツキの懲戒処分申請書を上司に提出してしまうのです。
いかにも堅物のやりそうなことではあります。
シャツキを懲戒などするつもりもない上司もうんざりしており、何とか話をまとめて来いと命じます。
シャツキは、仕方なく、その女性の家に行き、謝罪してサポートセンターを紹介することにしたのですが、その女性の家に行ってみたところ、女性は暴行を受けて倒れており、まだ幼い子供が泣き叫んでいました。
青ざめるシャツキ。
ファルクの言っていたことは本当だったんだ!
慌てて救急車等を手配するのですが、その状況を見たファルクは、「もしこの女性に万一のことがあったら、あなたを許しませんからね」と言い捨てます。
シャツキは、俺は検察官を辞任しなければならないと思い詰めていくのです。
そんなシャツキの下に新たな情報が入ります。
特殊な脚の手術をした患者というのは旅行代理店の共同経営者ナイマンで、しばらく前から出張に出かけたきり戻って来ない男なのですが、何と、その男の手の指は2本欠損しているというのです。
発見された骨には全く欠損は無かったはずだ!
直ちに大学教授にその旨を連絡し、すべての骨のDNA鑑定を依頼します。
その結果、人体のすべての骨が揃っているけれど、この骨には5人の違う骨が混じっているということが判明します。
確かに、生きながらアルカリ溶液で溶かされたとしたら、例えば耳骨等の非常に小さい骨まで回収することはほぼ不可能と思われるのに、発見された死体の骨は完全に揃っているのはおかしいのだと教授も言います。
これは、誰かがナイマンを生きながら溶かして白骨化した後、回収できるだけの骨を回収し、不足している部分の骨を他人の骨で穴埋めしたとしか考えられません。
この死体は一体……。
という、なかなか衝撃的な設定のミステリです。
本作は、ポーランドのミステリということで、これまではあまり読む機会のなかった作品です。
全体的に重苦しい雰囲気が立ち込めている作品であり、また、ストレートに事件を追う筋が展開するというよりは、シャツキのプライベートな部分が並行的に描写されていきます。
さて、下巻でこの死体の謎は解明されるのか?
また、おそらく夫に暴行されたと思われる女性は助かるのか?
シャツキは検察官を辞めてしまうのか?
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
『怒り』(下)
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