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『エクソシスト』の原作者による良質のミステリ、サスペンス(ホラーではありません)

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!1級
ディミター
 本書の著者は、あの『エクソシスト』の原作者です。
 とは言っても、本作はホラーではありません。
 非常に緻密な、凝ったミステリ、サスペンスなんです。

 まず、第一部は私は読むのがかなり辛かったです。
 というのは、第一部ではかなり凄惨な拷問シーンが大部分を占めるから。
 1973年、アルバニアで要人の暗殺事件の捜査の過程で『虜囚』と便宜的に呼ばれる男が拘束されました。
 最初は通常の取調べだったのですが、この男、何も答えようとはしないのです。

 持っていた身分証明書から身元は判明し、確かにこの男を出身地で見たという者も出てくるのですが、調べて行くと身分証明書の男は既に死亡していることが分かります。
 俄然、不信感が増していきます。
 徹底した取調べが行われますが、何も答えないので遂には苛烈な拷問にかけられることになってしまうのです。
 しかし、それでも『虜囚』は何も答えず、また、ひどい拷問を受けても苦痛を見せないのです。
 この拷問シーンが苦手で、ここはちょっと我慢して読み進めなければなりませんでした。
 第一部の終わりで、この男は脱走を果たします。

 さて、第二部は1974年のエルサレムが舞台となります。
 ある病院を中心に物語が展開していくのですが、第一部とは全く違う話が進みます。
 それも、読者にとってはどういう話なのかよく分からない色々なエピソードが続いていくのです。
 時に、誰が誰に宛てて書いているのか不明で(名前は出てくるのですが、それがどういう人物なのか読者には分からないのです)、内容もよく理解できない手紙が挿入されたりもします。

 このパートにはメラルという人望の厚い優秀な警部補が登場します。
 彼は、ある自動車事故が気にかかっており、上司から「特に大きな被害があったわけでもないのだからもう良いんじゃないか?」と言われても何かがあるという感覚を拭い去れず、捜査を続けているのです。
 その事故とは、深夜、一台の車がガソリンスタンドに突っ込んで炎上したという事故でした。
 しかし、車内には人がおらず、運転手を特定するような資料も残されてはいませんでした。

 目撃者は二人おり、一人は誰も乗っていない車がガソリンスタンドに突っ込んだと主張します。
 しかし、もう一人(盲人なのです)は、音から判断して、炎上した車の前に別の車が近くを走っていた事、炎上した後、車のドアを開け閉めする音が複数回聞こえ、誰かが炎上する車内から重そうな物を引きずり出しているような音を聞いたなどと主張するのです。

 炎上した車はレンタカーでしたが、バンパーガードが新たに取り付けられていたことが分かり、レンタカーを借りた人間の捜査から一人の人物が浮上してきます。
 そのほか、重要なことが段々明らかになっていくのですが、これからこの作品を読む方のために、これ以上のことは伏せておいたほうが良さそうです。
 
 主要な舞台となっている病院の方でも不思議な出来事がいくつか起きます。
 主要な登場人物でメラルの親友である医師は、病院内で殺人が行われているという考えに取り憑かれていき、また、何故か衰弱していきます。

 このパートも最初のうちはなかなか読むのがしんどいところがあります。
 なにせ、どういう話になっているのか読者に対して全く説明されないまま話がどんどん進んで行くのですから。
 でも、ここで放り出してはいけません。
 我慢して読み進めるところです。

 我慢して読み進めていくと、ある所から急に話が見えだしてくるところに至ります。
 ここまで来たらもう後はラストまでまっしぐら。
 ここまでで語られてきた様々な、よく分からなかったことが次々とつながっていくのです。
 「そういうことだったのか!」、「だから、あそこであんなエピソードが語られていたんだ」ということの連続になるのです。
 ここまでの何だかよく分からなかった部分も、隅々まで気を遣われて書かれていたことが分かり、カタルシスを感じることができます。
 読み切った人は、この作品の緻密さ、構成の妙を堪能することができるでしょう。

 決して読者に対して親切な小説ではありません。
 もう少し分かり易く説明をして欲しいと感じたことも何度もあるのですが、読み終えてみればなるほど納得という感覚を覚えることでしょう。
 全体が見えてくると、非常に面白い話だったのだということが実感できます。

 さて、『エクソシスト』を書いた著者がこういう作品も書くというのは、著者はまた懐の深い人なんだなぁと思ってしまうのですが、巻末解説を読むと実はそういうことでもなさそうなのです。
 というのは、『エクソシスト』の原作にも、ミステリ、サスペンスの要素が実はかなりの部分あるというのですね。
 しかし、映画化された際に、ホラーに徹するため、そういった要素はばっさりと切り捨てられてしまっていたのだとか。
 つまり、著者はそもそも、ミステリ、サスペンス志向の強い作家だったと解説者は分析しているのです。

 なるほど、『エクソシスト』って本当はそういう作品だったんだ。
 巻末解説者も、本作を読んで興味を持ったら是非『エクソシスト』の原作も読んで欲しいと書いています。
 私、『エクソシスト』の映画は見ましたが、原作は読んでいませんでした。
 これは、原作も読んでみようかなという気持ちにさせられた一冊でした。

 本作は忍耐が必要な作品ですが、頑張って読み通した方は報われること間違いない作品とお勧めできますよ。


読了時間メーター
□□□     普通(1~2日あれば読める)
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  • 掲載日:2018/09/17
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この書評へのコメント

  1. darkly2018-09-17 09:25

    おはようございます。最後の一文に凄く共感いたします。行きつ戻りつじっくり時間をかけて読むだけの価値はあると思います。

  2. ef2018-09-17 09:37

    >darklyさん、ありがとうございます。
    かなり大変な読書になるかもしれないけれど、おっしゃる通り時間をかけてでも読み通す価値がありますよね。
    これから読もうという方はどうぞ覚悟を完了してから、投げ出さずにお読みください。

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