久世番子のマンガ、
「よちよち文藝部 世界文學篇」を読み、高慢と偏見は面白いと聞きました。でも上下巻だしなと、ためらっていたところ、本著が光文社古典新訳から発刊されていることを知りました。ジェーン・オースティンは文豪の一人です。二百年前以上の活躍ですが、本著は新訳ですし、通常の長さなので読んでみることにしました。
大正解でしたね。こんなに面白い作家さんだったとはという感想です。日本で文豪というと、繊細すぎて理解するにはハードルが高いイメージがあるのですが、海外の場合は翻訳次第で調整ができます。光文社古典新訳は、ちょっとやり過ぎ感があって賛否が分かれています。本著の解説でも長すぎる文章を整理したとあるので、原文の雰囲気とは趣が異なるかもしれません。こういった冗長的な長さは、二百年前ぐらいのゴシック小説にはよくあるようですが、わたしは楽しめることが大事なので、本著の取り組みはありがたいですね。
本著が書かれた時期は、ゴシック小説が大流行していたとのこと。わたしはここ最近ゴシック小説にはまり少しずつ読んでいるのですが、現代まで残っている作品は少なそうです。作中で、主人公のキャサリンが傾倒しているアン・ラドクリフ。ユードルフォの秘密という作品が作中で題材になっていますが、知りませんでした。アン・ラドクリフの作品は、ゴシック小説をチェックしていたときに森のロマンスが引っかかっているのですが、未読です。キャサリンが好きなゴシック小説を次々と挙げていく場面があるのですが、脚注に後世の研究者が調べて実在したことが分かったとあるので、すぐに消えていった作品が多かったのでしょう。たぶん、分野的に読み捨て系の軽いエンタメだったのでしょうね。
流行小説にときめくキャサリン。イギリスの田舎村の牧師の娘です。村一番の地主のアレン氏はキャサリンを気に入っていて、恋人が村で見つからないなら村の外で探すしかないと思い、一緒にバースに行きましょうと誘ってくれました。キャサリンにとっては夢のような六週間です。こころはずませてアレン夫人についていくことになりました。
バースの街で起こったことは、当時の人にとってはちょっとした憧れの世界でしょうね。舞踏会にいき、素敵な男性と出会い、女性と親友になり、仲間たちと一緒に馬車で遠出にいくという、夢のようなバカンスが描かれています。
ノーサンガー・アビー。アビーとは古い僧院のことです。むかしは修道士が多く暮らしていた大きな僧院が、宗教改革で貴族の持ち物になって以降の時代です。城(キャッスル)の次の格付けのアビーは、大邸宅を表す憧れの場所です。キャサリンが仲よくなろうとしている人たちは、そんなアビーに住むたいへんな身分の兄妹です。ゴシック小説好きのキャサリンは、身分や財産よりも、むしろ古い僧院にゴシック小説のロマンを夢見てしまい、いろいろとやらかすというコメディ小説です。
キャサリンの純粋さがかわいくて、とても大衆的で楽しめる小説でしたよ。結構笑いました。海外の文豪のイメージがちょっと変わりました。
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