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地上の楽園ユートピアの行きつく先は?

  • レビュアー: さん
  • 本が好き!免許皆伝
幼年期の終わり
 この本はネット書店で買った。町の本屋さんには申し訳ないが、新刊がポイント割引で買えるし、何よりも誰も開いていないまっさらな本が来るのがいい。漫画の場合は、インクが貼りついてぺりり、ぺりり。この本は底部の切断の際に、圧縮がきつくて貼りついたみたいで、ぺりり、ぺりり。嬉しくてページをめくる時に、顔を近付け、ゆっくりめにぺりりぃぃと楽しんでしまった。はっ、電車の中で読んでいるというのに、これでは変態ではないか orz まあ、やってしまったものはしょうがない。ついでに、登場人物の名前付き栞がついてくるのが結構便利である。

 内容も、期待にたがわない出来栄えだった。もちろん光文社の古典新訳による読みやすさもかなり貢献しているはずである。二年ほど積んでしまい、ちょっともったいなかった。
 クラークといえば、本著と2001年宇宙の旅が有名である。アシモフ、ハインラインと並び称されるSF界の巨匠と呼んでいいだろう。

 本著でまっさきに強く感じたのが、ユートピア思想である。たまたま「夢のかけら」を最近読んで、その中の第一章でヨーロッパにおけるユートピア思想が丁寧に解説されていたため、本著の理解に非常に役に立った。日本は輪廻の思想で、この世とあの世を精神的につなげて考えている。これに対して、キリスト教的世界観では、天国は切り離された存在で、生まれ変わりは特定の人だけに許された奇蹟のようである。詳しくなくて申し訳ないが、ひょっとしたらキリストだけが許されているのかもしれない。
 それだからこそ現世でのユートピア思想が発達するわけで、「夢のかけら」で共産主義がユートピア思想の発露の一つだということを知ったときには驚愕した。

 幼年期の終わりは、宇宙規模から見て種族的に幼年期であった人類が、宇宙人であるオーバーロード(最高君主)の統治を受け、次の段階へと進んでいく話だ。エピソードの一つとして、オーバーロードによりタイムテレビが貸与される場面がある。この装置を使い、過去の真実を次々に暴いていった結果、奇跡やお告げをよりどころとしていた宗派がことごとく破綻し、純粋な形の仏教だけが残ったとある。
 面白い。とんでもない発想だが、ものすごく納得してしまう。同じように高度な科学文明のおかげで、人類は様々なストレスから解放され、この世の楽園を謳歌するのである。

 そして、その先に待っていたものは、想像をはるかに超えていた。確かにSFの古典と称されるほどの、価値のある小説だと思った。ロボットとかのSF要素はあまり強くないため、万人向けである。
 とにかく驚いてしまったとしか言いようがない。
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  • 掲載日:2012/10/16
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