今、ホラーブームとかでブームに乗った本を三冊もらった。大切に残しておくジャンルではないということらしいけれど。話題作は読まねば。でありがたく頂戴して積んだ。
それでも過去の恐怖作は残していて、これもその一冊。この気が利いた素敵なホラーを年頭に再読。
前口上が長いけれど、
リチャードの兄一家(ロジャー、その妻ベリンダと息子のジョナサン)が突然の交通事故で亡くなった。
メカに強いジョナサンがリチャードのために組み立ててくれたワープロを仕事部屋にしている小屋に運び込んだ。
大きな不格好なIBMディスプレイにつぎはぎのコードがぶら下がり天才の脳内の様な複雑怪奇な代物だったが、ジョナサンの熱い気持ちと一瞬できた別れがリチャードを動かし使ってみることにした。
重い機材を友人のノートホフに手伝ってもらった。彼は兄一家の隣に住んでジョナサンを可愛がっていた。
息子のサムにも手伝わそうと呼んでみたが訳の分からない曲でギターをかき鳴らし、リチャードの部屋を占領していて来もしない。
妻は煽情的な本を読みながら何かつまんで食べTVの前から動かない。
今、彼は離れの小屋で仕事をしている。彼が結婚した他人と、その彼女が生んだもう一人の他人を閉めだすことができる唯一の部屋で。
手伝ってくれたお礼のお茶も丁寧に断られ、ばつの悪い思いをした、うちの家族はいつもこうだ。
ワープロを机の上に、オリヴェッティのタイプライターの席を空けておいた。(懐かしオリベッティ)
「動くかな」
「どうだろうね」
「あの子は掛け値なしのいい子だった」
「あの子がお好きだったんですね」
「お好きどころじゃないよ、ほんと非の打ちどころのない立派な少年だったよ」
全くおかしな話だ。小さいときからろくな人間でなかった兄が立派な女性を妻にして、頭のいい立派な子供をもうけた。
リチャードは温和で善良でありたいと常に思ってきたが。妻はむっつりで豚のよう、息子はアレだ。どうしてこんなことに。
友人が帰り、スイッチを入れてみた。画面には
”お誕生日おめでとう、リチャード叔父さん。ジョナサン"
兄一家は二週間前にロジャーの酒酔い運転で車が崖から落ち潰れて炎上。ジョナサンは15歳になったばかりだった。
私の誕生日はもうすぐ。これは誕生日プレゼントだったのか。
ワープロは夢だ、あれば作品も多くできるのに。持てばいいじゃないの。それが安くなくてね。
スイッチを入れて“実行” 打ち込んだ言葉が消えた。作動した。
部屋を見た。妻の写真がかかっていた、“デリート”で消えた。消滅した。呆然とした。
変圧器から焦げた匂いがしてきた。スイッチを切らなければ。
しかし・・・ 妻の写真が。
“実行” 元に戻った。
床には何もない。“挿入(インサート)
続けて20ドル金貨12枚 “実行” 金貨が出た。
全部のスイッチを切って小屋を飛び出した。
そして
紆余曲折の末彼はやった。壊れそうなワープロには時間がなくて
一層太って妻が帰ってきた、口汚く彼に話しかけ「あのワープロは動いたの」
知っていたのか。ワープロのこと
「子供はいたのかな」「そんな小汚いガキいるわけないでしょ」
ついに変圧器も限界だ、息子を”挿入“するか 否 妻を“削除”
オーバーロード。オーバーロード。もう治せませんねと修理屋が言った。
「とうさん」振り向くとジョナサンが笑っていた。
後の収録短編
パラノイドの歌
オットーおじさんのトラック
ジョウント
しなやかな銃弾のバラード
猿シンパル(ちょっと怖い)
というめでたいような、ありそうでない、脳内ホラーでした。どれも面白い。。
イヤ、 でも行間のあれこれはさすがキングです。
今年も皆様のご健筆を祈りながら、ぼつぼつ現れます。よろしくお願いいたします。
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