本書はホーフハイム刑事警察署のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン首席警部とピア・キルヒホフ警部が活躍するドイツミステリシリーズの第2作だ。
といっても日本では、一番最初にシリーズ3作目にあたる
『深い疵』が、続いて4作目にあたる
『白雪姫には死んでもらう』が紹介されてから、1作目の
『悪女は自殺しない』が邦訳刊行されているので、シリーズの邦訳としては4冊目にあたる。
完成度が高くシリーズの奥深さがわかると評判の3作目から翻訳出版したのだという話だけあって読み応えたっぷりだった
『深い疵』ですっかりファンになってしまった者としては、主役のコンビをめぐる1作目と3作目の間を埋めるはずのあれこれがいろいろ気になってもいたところなので、献本に外れはしたものの、是非とも読まねばと当たったつもりで買って読んだ作品でもある。(ちなみに購入したのはKindle版)
動物園で左腕と左足が切断された死体が発見される。
被害者は高校教師で環境保護活動家。
多くの若者に慕われる一方で、その過激な思想とやり方で様々な人ととぶつかり合い憎まれてもいた。
動物園の園長、開発業者やコンサルタント、妻、あるいは元妻、隣の住人等々、捜査が進めば進むほど、被害者を殺す動機を持つ怪しい者がつぎつぎと浮上してくる。
ホーフハイム刑事警察署のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン首席警部とピア・キルヒホフ警部はいつものようにタッグを組んで捜査に当たるが、オリヴァーが妻との間のギクシャクが気になって気もそぞろになるかと思えば、夫と別居中のピアはピアで、独り暮らしには向いていないと考えてはじめている模様。
このシリーズの刑事達ときたら、本当に人間くさくて、オリヴァーときたら年中勘を頼りに捜査を進め、しかもその勘が例によって例のごとく全く当てにならないし、ピアはピアで……だからさー!あなたたち!いつも言っているじゃない!事件関係者と個人的なつきあいをしてはダメなんだってばっ!!と、横から口を出して膝詰めで説教したくなってしまう?!
でもなぜか、ぐいぐい読ませる展開で、ついつい一気読みしてしまうのもいつものことなのだ。
少し残念なのは、既に3、4作目を読んでいるため、オリヴァーの夫婦関係やピアのプライベートが今後どうなっていくのか、既にこの先を知ってしまっていることだ。
となるとあまたの容疑者の中であの人物だけは無実のはず!とか。
ピアと別居中のヘニングの仲はねえ……とか、わかってしまうところがなんだかね。
やっぱりシリーズものは、順番に読んでいった方がより楽しい。
とはいえ、あの
『深い疵』との出会いがあったからこそ、このシリーズにここまで入れ込んだのかもしれないが……。
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