その本は



 
  

その本は、本を愛する人へ宛てて書かれた物語なのであった。
本という「形」と、その「中身」を、たいへん楽しく鑑賞した。目が見えなくなった王様の命令を受け、又吉氏…
					本が好き! 免許皆伝
					書評数:862 件
					得票数:25661 票
					
「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。



 
  

その本は、本を愛する人へ宛てて書かれた物語なのであった。
本という「形」と、その「中身」を、たいへん楽しく鑑賞した。目が見えなくなった王様の命令を受け、又吉氏…



 
  

作品世界が切実に伝えるのは、人間が今まさに直面している危機だ。
本屋大賞受賞作 『鹿の王』 は、主義主張の異なる民族の「共生のあり方」を考えさせる作品だった。上橋フ…



 
  

苦しきこと多くとも誇り高き英国労働者階級の、ノー・フューチャーな日々を描く。ブレイディみかこの原点、ここにあり。
ブレイディみかこさんは、英国ブライトンに住む福岡県出身のパンクな母ちゃんである。 トラック運転…



 
  

古代ギリシアの『戦史』に描かれた争いは、歴史上の多くの戦争の象徴である。
今から2500年ほど前、古代ギリシアでは『ペロポネソス戦争』が勃発した。最強の都市国家スパルタと新興…



 
  

人と犬との間に築かれてゆく信頼関係を描いた、かけがえのない11年の記録。
秋田犬や柴犬などの日本犬は、縄文時代から日本人と強い結びつきがある。また彼らは、あらゆる犬種の中で最…



 
  

古書店は、文化を後世に残すためにつながる、小さな鎖のひとつなのだ。
ふと目に留まった著者のインタビュー記事。 創作のきっかけは「編集者から神保町を舞台にした作品を提案…



 
  

この独創的な美しい幻想空間を、『雨月物語』の海外版と呼びたい。
タイトルに惹かれ予備知識なしに手に取ったので、作者が初めて出版したこの作品で、ヒューゴー賞ノヴェラ部…



 
  

「兵とは国の大事なり。」開戦前の熟慮こそが、最も大事なことなのだ。
以前読んだ 『戦国大名と読書』 に、武家の子弟は『孫子』により戦を学んだと書いてあった。この中国最古…



 
  

「蜘蛛女」のキスに、愛がこもっていたのは確かなことだ。
ほぼ全編が会話文で出来ているこの小説を読むのは、電車に乗っている時に隣に座った二人連れの会話が耳に入…




 
  

ミステリである以上に、何よりもひたすらに、崇高な愛の物語である。
久しぶりに作品にノックアウトされた。辛い場面が多く、ページをめくった先には更なる哀しみが待ち受ける予…



 
  

陰惨な事件にもかかわらず一気読みしてしまったのは、魅力的な主役と相棒のおかげである。
本書は英国のカンブリア州を舞台にしている。風景は荒々しく人口は少なく、厳かな自然の支配する場所だ。カ…




 
  

人の気持ちを読み取るのは苦手だが、論理的思考能力は抜群。自閉スペクトラム症の勇気ある少年を探偵役に据えた、爽やかなミステリ。
ミステリ作品に必要な条件として、「手がかりの全てが読者に提示されていなければならない」というのがある…



 
  

我々は皆、心という箱庭に夢と物語をしまいこみ、時を旅する巡礼者なのだ。
YA向けSF小説みたいな読み心地である。驚異的な夢を見せるからか、摩訶不思議なアイテムの面白さか。時…



 
  

過ぎ去りし時代へのノスタルジーで胸がいっぱい。
本書を菊池光さんの訳で読んだのは私がたいへん若い頃で、「パリは四月である。」という書き出しも、主役ふ…




 
  

愛され見守られる幸福と、夢は叶うという希望を溢れるほどに湛えた、美しい文学。
本書は分類すれば「子どものための文学」ということになるのだが、大人が読んでも子どもが読んでも、その年…



 
  

曾祖父・幸田露伴の頃から語り起こす家族と猫たちの、穏やかな時間。
青木奈緒さんのデビュー作「ハリネズミの道」を読んだのはずいぶん前のことだが、日常を切り取る視線の奥ゆ…



 
  

人間の欲とか傲慢さも孤独や貧困の問題だって、今も全然変わってないよ、ゴーゴリさん。
ゴーゴリという作家の名前だけは知っていた。「なんか話が暗くて難解そうだな。」と思っていた。「でも、落…



 
  

かつて暮らした街、家族、出会った人と、犬たちのこと。
吉本ばななさんは、1964年に生まれて東京の千駄木界隈で育った。今までに暮らしてきたいくつかの街のこ…



 
  

平凡な男の、スペシャルな人生の物語。
チップス先生は英国のパブリックスクールでラテン語を教えていた、80代半ばのおじいちゃんである。思い出…



 
  

万葉の女性歌人の眼を通じて描く、古代史上最大の内乱。
大化の改新の後の、7世紀の倭国を舞台にした歴史小説である。主人公は万葉の女性歌人として知られる額田王…